茨城県筑西市で、江戸時代末期から160年にわたって乾麺を作り続けてきた「西村製麺」。地域に愛されてきた老舗が今、大きな転換期を迎えています。人手不足などの影響から乾麺の量産・販売を終了するという苦渋の決断を下す一方、伝統の技術を未来へつなぐため、現在は自社が運営するうどん店での提供に力を注いでいます。

落ち着いた雰囲気が特徴の「琥珀庵」の店内=筑西市
「進化のための縮小」という決断
西村製麺の創業は1866(慶応2)年。小麦の産地として知られる県西地域で、強いコシとなめらかなのどごしが特徴の麺は、地元の食卓に欠かせない味として親しまれてきました。
かつては海外輸出も行うほど急成長を遂げましたが、その裏では重さ25キロもの小麦粉袋を運ぶ重労働や、40度に達する乾燥室での作業など、現場の負担は小さくありませんでした。品質を維持するための人手確保が困難になる中、5代目社長の西村有美子さんは「満足いく製品が作れなくなった時はやめてほしい」という先代の言葉を胸に、今年6月、乾麺の製造終了を決めました。
160年続いた歴史に幕を下ろすことに悩み抜いた西村さんですが、「環境に合わせて形を変えることで生き残れる」という知人の言葉に背中を押され、「進化のための縮小」として再出発することを決意しました。
古民家風の店内で味わう「本来の味」
現在、西村さんが情熱を注いでいるのが、製麺所に隣接するうどん店「麺工房にしむら琥珀庵」です。
書院造りの意匠を活かした趣ある古民家風の店内で、製造量をこれまでの500分の1以下に絞り、一つ一つ丁寧に仕上げたうどんを提供しています。現在は西村さんとスタッフの2人で切り盛りし、来店客に「うどん本来の美味しさ」を直接伝えています。
SNSで世界へ、未来へつなぐ技術
また、時間に余裕ができたことで、新しい取り組みも始まりました。SNSでは「西村製麺うどんラボ」として、うどんの歴史や作り方の情報発信をスタート。英語での発信も行い、外国人観光客へのアピールも視野に入れています。
「160年の歴史を、新しい形で未来へ受け継いでいきたい」と語る西村さん。形を変えながらも、そこには変わらない職人の技と情熱が息づいています。筑西の地で守り抜かれる老舗の味を、ぜひ一度堪能してみてはいかがでしょうか。
