俺たちは幼馴染10人で、地元・栃木市藤岡町で農業を始めた-。最近、Instagramで話題になっている動画をご存知でしょうか。アカウント名は「FJP」。一見少しヤンチャそうな風貌と、農業や地元へのまっすぐな思いが同居する10人の挑戦をご紹介します。
誰かがやらないといけない
栃木県栃木市藤岡町。日本最大級の遊水地として知られる渡良瀬遊水地があり、群馬県、埼玉県と県境を接する小さな町こそが、彼らの物語の舞台です。

メンバーのうち5人は同じサッカー部に所属していたそう(FJP提供)
10人は藤岡で生まれ育った同級生。小さい頃から仲が良く、大人になってからも深い付き合いが続いていました。
「FJPというのは“藤岡プール”の略なんです」
そう明かすのは、FJP代表の上岡良健さん。メンバーで毎月貯金(プール)をして年に一度、一緒に旅行に行っていたことが由来です。

代表の上岡良健さん(FJP提供)
北海道、沖縄…。子供の頃のように同じ時間を過ごす中で「みんなでお金持ちになりたいね」。そんな話もしたといいます。
とはいえ、それは何気ない会話の延長。一気に現実味を帯びたのは昨年10月、沖縄・石垣島でのことでした。
「みんなで農業をやろう」
栃木市などで飲食店を経営している上岡さんは、お米や野菜が手に入りにくくなっていること、地元に耕作放棄地(使われなくなった農地)が増えていることが気にかかっていました。

地元の農地に足を運ぶ上岡さんたち(FJP提供)
誰かがなんとかしなければいけないのではないか。ならば…
「自分たちが農業を始めることで、耕作地や担い手が減っている現状をどうにかしたい」
30歳を目前にした大きな決断でした。
経験者ゼロからのスタート
10人で農業をやる-。そう決めてからというもの、「合同会社FJP」を立ち上げ、これからの段取りや役割分担を明確にしました。
それまで誰一人として農業に携わった経験はありません。農家としてやっていけるだけの田んぼや畑もありません。

畑の前で集合写真を撮る10人(FJP提供)
仕事のかたわら、藤岡拠点の「栃木組」は農地を借りるための地元回り。地元を離れている「東京組」は存在を広く知ってもらうため、SNSの投稿に力を入れました。
Instagramに初めてリール動画を投稿したのは2月9日。畑で撮影したばかりの動画をアップすると、瞬く間に再生回数が伸びていきました。
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「その日は動画がバズっているのをみんなで見て喜びました。自分たちの思いや活動に対して、好意的な声をここまで多くもらえていることに驚いています」
SNSを担当する関塚純平さんはそう話します。

SNS担当の関塚純平さん(FJP提供)
地元での泥くさい活動と、SNSでの爆発的な拡散。両方が相乗効果となり、協力を申し出てくれる人が増えてくるようになりました。
ほかにも、農業を始める上でのハードルをなんとかクリア。この春からはメンバーの1人がこれまで勤めた仕事を辞め、専業で取り組んでいます。
- 農地:地元回り+SNS効果で田畑を「貸したい」との連絡が届くように
- 農機具:メンバーの白石浩士さんの実家である農機具店から提供
- 資金:これまで年1回の旅行に充てていたプール金を当面の活動資金に
- 販路:上岡さん経営の飲食店が農作物の大きな販路に
農業は「かっこいい」
活動開始からわずか数カ月。地元の方たちから借りた田畑は計15町(東京ドーム3個分以上)にも上り、上岡さんいわく「1年目としてはバカなの?と言われるぐらいの広さ」なのだそう。
休日中心に集まり、お米の苗作り、ネギ、キャベツ、ニラ、ニンジンなどの栽培がすでに始まっています。

芽を出した米の苗(FJP提供)
地元の農家さんにも教えを請いながら、少しずつ農業の知識や技術を蓄えています。
「農業がかっこいい、稼げる職業だと思ってもらえるようにしていきたい」
私たちの暮らしに欠かせない食や農業。それを子供たちの代につないでいくため、身をもって成功への道筋を示す覚悟です。

畑で農作業をするメンバー(FJP提供)
そして、自分たちを育ててくれた藤岡という町への思いも。
地元に住む白石さんは「(藤岡は)何もない所」と言いつつ、「自分にとっては友人との思い出が残る場所。若者も減ってきている中で、愛着のある地元がなくならないよう農業で盛り上げたい」と話します。

農機具店の3代目で、農作業を担う白石浩士さん(FJP提供)
普段は都内にいる関塚さんは「自分は20代前半で藤岡を出ましたが、東京で地元の話をすると(メンバー同士の)仲の良さに驚かれます」。小さい町だからこその“つながり”の深さを感じています。
若い頃には周りに迷惑をかけたこともあったそうですが、農業をきっかけに地元を盛り上げ、恩返ししたいとの思いを抱いています。
順調なら秋ごろには、初めて育てたお米や野菜が収穫期を迎えます。
支えてくれる人とつながる
力強く一歩を踏み出した一方で、野菜の種まきや精米、貯蔵などの設備投資に充てる資金はまだ足りていません。
金融機関の融資や国・自治体からの補助金を得るには時間がかかります。そこで、活動を応援したい人と直接つながることができるクラウドファンディング(クラファン)を始めることにしました。
期間は4月26日(土)~5月31日(土)。目標金額を500万円とし、3,000円~100万円(20万円以上はスポンサー募集)の返礼品を設けています。

子供たちとの交流(FJP提供)
返礼品の中には、メンバーが育てたお米や野菜が届いたり、収穫イベントに参加できたりするものも。
クラファンの支援者やSNSのフォロワーとのつながりを深め、新たな“農家像”を示していきたいと考えています。

集合写真を撮る10人(FJP提供)
栃木市藤岡町の幼馴染10人の旅路はここからが本番。
「俺たちと一緒に日本の未来を耕しませんか」
そう呼びかけています。
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- Instagram(@fjp_fujioka)
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- YouTube(FJP [藤岡プール])