茨城県筑西市を拠点に活動する漆芸家、大西未穂さん(48)。父は、2024年5月に惜しまれつつ亡くなった人間国宝の漆芸家・大西勲さん(享年79)。そして母の朱岳さん(80)も鎌倉彫作家という、芸術一家の環境で育ちました。
「両親の技術を受け継ぎ、さらに新しい挑戦をしていきたい」と語る大西さん。二人の師から受け継いだ伝統と、自ら磨き上げた「沈金」の技法が織りなす、美しく繊細な漆器の世界をご紹介します。
「うちは塗りも彫りもあるから」と輪島へ 厳しい修業で得た唯一無二の技
大西さんは神奈川県逗子市生まれ。小学校に上がる前に、母・朱岳さんの実家がある下館市(現・筑西市)へと移り住みました。
宇都宮文星短大(栃木県)で日本画を専攻した大西さんが、卒業後に選んだのは「漆」の道でした。「父は塗り、母は彫り。わが家にない技術を身に付けたい」との決意で、単身、石川県輪島市の沈金師に弟子入り。3年間、住み込みで師匠の技を必死に学び、沈金の基礎を体に叩き込みました。
帰郷後は、両親の作業場で二人の作家の空気感を肌で感じながら、自身の表現を追求し続けています。

両親の技術を受け継ぎ、挑戦を続ける漆芸家の大西未穂さん=筑西市玉戸
「はかなさ」に宿る美しさ。大子漆と沈金が奏でるハーモニー
大西さんの作品の魅力は、透明度の高い大子漆を用いた美しい塗りと、そこに施される繊細な「沈金」です。
沈金とは、漆器の表面を細いノミで彫り、その溝に漆をすり込んでから金粉を定着させる技法。「はかなさが魅力」と語る大西さんが描く模様は、庭に咲く花々や古い着物、歴史ある建物などから着想を得たオリジナルです。
父が残した「魔法の道具」と共に歩む道
父・勲さんが亡くなった後、大西さんはその作業場と道具を引き継ぎました。「道具が工作しているんだよ」――。生前、道具を何よりも大切にしていた父の言葉が、今も胸に響くといいます。
「父が長年使い込んだヘラやハケは、もうその形が出来上がっているんです。道具が私にいろいろなことを教えてくれるような気がします」
亡き父の面影を感じながら、大西さんは今日も工房で漆と向き合っています。
10月1日から7日まで水戸京成百貨店で個展を開催
大西さんの作品を間近で見ることができる個展「大西未穂漆芸展 漆の魅力」が、2026年10月1日から7日まで、茨城県水戸市の水戸京成百貨店4階 アートギャラリーで開催されています。これまでの代表的な朱色の漆器やアクセサリーに加え、今回は新作の「深い緑色」の漆器もお披露目されます。
「いつかは父が得意とした曲輪の技法にも挑戦し、もっと迫力のある大きな作品を作ってみたい」と瞳を輝かせる大西さん。伝統を敬いながらも、現代の暮らしに寄り添う新しい漆の魅力を、ぜひ会場で感じてみてください。
