茨城県古河市錦町の老舗靴店「シューズサロンタグチ」は、靴の販売に加えて修理とクリーニングに力を入れています。
サービスを始めたきっかけや、依頼に訪れたお客さんとのエピソードなどを取材しました。
シューズサロンタグチは1921(大正10)年の創業です。創業時は、販売していた草履やげたの修理もしていて、当時からアフターメンテナンスを大切にしてきました。
足が不自由な人のために
今から約30年前、シューズサロンタグチは靴の販売のみを行っていました。当時は、現会長の田口精二さん(77)が3代目社長を務めていました。
その頃は、足の不自由な人が靴を購入する際に4~5万円はかかり、買い替えるのが大変でした。
そうした人たちのために精二さんは靴の修理が必要だと考え、実践するようになりました。
取材当日、精二さんは30年ものの革靴の修理に取り組みながら、「革靴は耐久性があり、修理すれば一生履けます」と強調しました。
シューズサロンタグチはかつて、店で販売した靴のみを修理していましたが、5年ほど前から他店が販売した靴も対応しています。
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ここで、靴修理の一例を紹介します。
▼Before
まず、ブーツのソ―ル(靴底)を張り替えます。
修理前。かかと部分の外側がすり減っているのが分かります。
ソールの厚さに注目してください。
こちらのソールに張り替えます。
▼After
厚みのある真新しいソールになりました。修理前との違いは一目瞭然です。
安定感のあるブーツに生まれ変わりました。
靴を磨いたら修理完了です。
困っている人のために
クリーニングを始めたのは、現社長で4代目の田口善彦さん(40)で、3年ほど前からです。
善彦さんは、靴のクリーニングに失敗して困っている人がいることをSNSで知り、きれいに仕上げるプロのクリーニングを始めました。
SNSには、靴に染みができたり変色したりする事例が載っていたそうです。
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ここで、白いスニーカーのクリーニングを紹介します。
▼Before
クリーニング前のスニーカーは、つま先部分を中心に汚れています。
横から見ると、ソール周辺の汚れも目立ちます。
ソール全体がかなり汚れています。
▼After
汚れが取れ、真っ白になりました。
横から見ても汚れが落ちているのが分かります。
ソール全体の汚れも落ちています。
50日かけ1200キロ歩く
シューズサロンタグチではこれまでに、母の形見を娘に履かせたいという男性や、自身が履いていた高価な靴を孫に履かせたいという年配の女性など、修理を依頼するお客さんが訪ねてきました。
常連客の80歳男性は、60歳の時に購入した靴を現在も履き続け、四国遍路の旅に出て、50日かけて1200キロ歩いたこともあります。修理の依頼に年5回訪れ、現在までに通算で100回ほど来店しているそうです。
涙ぐみ喜ぶ男性
ある日、善彦さんは広島県の男性から革のブーツ(トレッキングシューズ)を修理依頼されました。
男性は、これまで手当たり次第、靴修理店に問い合わせましたが、どの店からも断られたそうです。
善彦さんは、男性にブーツを郵送してほしいと伝えました。
ところが男性は、ブーツを持って直接説明したいと善彦さんに訴え、新幹線などに乗り継いで来店しました。
男性が持参したブーツは、かかと部分に大きな穴が開き、破れているところもあって、とても履ける状態ではありませんでした。
男性は、数年間つらい思いをしていた時期があり、その時にずっと履いていたブーツに強い思い入れがありました。
善彦さんは、約1年かけて修理しました。靴底全体に手を入れ、かかと部分の大きな穴は革を当てて補修しました。
修理後、男性が再び来店。善彦さんが男性にブーツを渡すと、男性は涙ぐみながら喜んだそうです。
善彦さんは「靴修理を知らない方がまだまだ多く、そうした方たちに修理して履けることを伝えたい。できる限り依頼を断らず、大切な靴を長く履いてもらいたい。SDGs(持続可能な開発目標)に『つくる責任 つかう責任』という項目もあるので、今後も修理、クリーニングを継続していきたい」と力を込めていました。
修理、クリーニングの料金はホームページで確認してください。
住所:茨城県古河市錦町1-82
電話:0280-22-0475
営業時間:9:00〜19:00
定休日:水曜日
ホームページ:http://kutuanodon.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/kutuno_taguchi/
フェイスブック:https://www.facebook.com/iikutu.taguchi