江戸時代に日本の医師として初めて人間の脳と眼球の解剖を行った古河藩医の河口信任ら河口家の業績を紹介する企画展「河口家の人びと」が茨城県古河市中央町の古河歴史博物館で開かれています。
学芸員の永用俊彦さんは「日本の医学を前進させる上でも大きな役割を果たした。その業績を多くの人に知ってもらいたい」と話しています。会期は6月29日(日)まで。
河口家はオランダ商館医、カスパルから外科医術を学んだ初代の河口良庵(1629~87年)以来、代々蘭方医を務めてきました。カスパルの診察を受けた当時の将軍、徳川家光から医術の習得を命じられた一人が良庵だったとされます。
企画展「河口家の人びと」では、良庵が「カスパル流」医術の奥義を苦心してまとめた「外科要訣全書」を展示しています。カスパル流は同家に受け継がれ、古河藩主の土井家に藩医として召し出されることにもつながりました。
河口家の中で最もよく知られているのが信任(1736~1811年)です。1770年に医師として初めて、京都の刑場で斬首された刑死者の解剖を自ら行いました。

河口信任が使ったとされる解剖刀
「河口家の人びと」では、72年に刊行した解剖書「解屍編」や、信任が使ったと伝わる現存最古の解剖刀、薬箱などが紹介されています。
当時は、医者であっても人体を解剖するのはタブー視された時代。特に頭部の解剖は行われたことがありませんでした。解屍編には医師自ら執行した所見や、臓器を一つずつ詳細に描写した解剖図23枚が収録されています。「河口家の人びと」では、この解剖図を拡大したパネルが展示されています。
このほか信任の孫の信順(1793~1869年)の関連資料も紹介されています。信順は「解体新書」を翻訳したことで有名な杉田玄白に弟子入りし、当時の最先端の洋学を学びました。古河藩にいち早く種痘(ワクチン)をもたらすなど貢献は大きなものがありました。
会期:2025年6月29日(日)まで※月曜休館
会場:古河歴史博物館(古河市中央町3-10-56)
開館時間:午前9時~午後5時※入館は午後4時半まで
入館料:400円(小中学生・高校生100円)
問い合わせ:0280-22-5211
ホームページ:https://www.city.ibaraki-koga.lg.jp/soshiki/rekihaku/tenjiannnai/kawaguchike.html