茨城県結城市で、こだわりのトマト栽培を続ける「とまとや岩﨑」の岩﨑勤さん(59)にお話を伺いました。トマトを作り続けて40年。30年前からさまざまな試行錯誤を重ねてきた岩﨑さんがたどり着いた、独自の栽培スタイルと“美味しさの秘密”をご紹介します。

とまとや岩﨑の直売所(結城市田間)
■トマトの美味しさは「土」が決める
とまとや岩﨑のトマトは、ハウスでの自然栽培(土耕栽培)で育てられています。収穫期は2月下旬から7月中旬。それ以外の時期はハウスに水を張って消毒し、1〜2カ月間土を休ませてから9月に種をまくことで、連作障害を防いでいます。
美味しいトマトを育てるため、岩﨑さんは過去にバッグ栽培(培養土の袋に植える栽培方法)なども試しました。しかし試行錯誤の結果、最終的に「自然の土での栽培が一番良い。日本の土は素晴らしい」という結論に至ったそうです。以前、アメリカのアリゾナ州を訪れた際、もはや農業の土(耕土)として機能していない土を目の当たりにし、日本の土の豊かさに改めて気づかされたと言います。

「自然の土での栽培が一番良い」と語る岩﨑勤さん(結城市田間)
「土はトマトにとって、人間で言えば腸のようなもの。栄養を吸収する腸(土)を整えれば、トマトも自然に美味しくなる」と岩﨑さん。
とまとや岩﨑では、現在主流となっている、根に過度のストレスを与えて糖度を上げるような特殊栽培や水分制限は行っていません。海洋深層水やこんぶの堆肥、魚の肥料、サンゴのカルシウムなどを与え、土が本来持つ力を活かし、植物生理を上手に活用した栽培を実践しています。「そうした仕事は土が全てやってくれる。あるものを活かすだけで、人工的にやることはない」と語る姿が印象的でした。
■天候との対話、そして「トマトは子ども」
トマト作りにおいて、日中と夜間の寒暖差が大きいと作りやすいそうですが、夜間の温度が高いと酸味が強くなってしまいます。そのため、天気の先読みが非常に重要です。気温の急上昇はもちろん、日照不足も光合成ができないため、2〜3カ月後の成長に大きく影響します。毎年変わる天候の中、同じ味になるように細やかな調整を続けていますが、「この味になる、というマニュアルはない」そうです。

「この味になる、というマニュアルはない」そうです(結城市田間)
総面積1200坪という広大なハウスの中を見学させていただくと、整然と並んだトマトの苗がひもで支えられていました。畑のような畝はなく、思った以上に乾いた土の上に置かれた穴あきのホースから、少量の水が「ちょろちょろ」と与えられています。ハウスの上部には日照量を調整する覆いも備えられていました。

思いのほか乾いた土に生えているトマトの苗木(結城市田間)
ビニールハウスの外に出て空を見上げると、雷雨の気配が。「雷雨が来そうだね」とつぶやいた岩﨑さんの表情がサッと変わったように見えました。「トマトは子ども」と語る言葉通り、常に気象の変化から目を離さず、愛情を注いで育てていることが伝わってきました。

合計1200坪のハウス。ここに見えているのはごく一部です(結城市田間)
■一番美味しい状態を届ける「直売」へのこだわり
以前は農協へ出荷していましたが、1987年からは直売所での販売のみに切り替えました。業者を通した店舗への出荷を行わない一番の理由は「作り方を変えたくないから」。業者に配送を頼んだり、店舗で安定供給を求められたりすると、収穫時期などの状態が変わり、結果的に本来の作り方まで変わってしまいます。直売であれば、自身の納得のいく作り方を貫くことができるのです。
昨今の原油高によりパッケージや燃料費が値上がりする苦労もある中、前日に収穫・選果したものを翌日パッケージして店頭へ並べるスタイルを徹底しています。販売するトマトが無くなるのが一番困るため安定供給を心がけており、「今年は安定している。ここ数年は、高級スーパーに置かれた品物と張り合えるようになった」と確かな手応えを感じているそうです。

「実が緑のころから、この星形の模様が出ていると美味しくなります」とのこと(結城市田間)
■あえて「品種名」は出さない
とまとや岩﨑で栽培しているのは全てF1種ですが、あえて品種名は公表していません。それは「食べる時に、味の印象が品種名に引きずられてほしくないから」。

清潔感が漂う直売所は昨年拡張したそうです(結城市田間)
「フルーツトマトは糖度8度以上とされていますが、トマトの美味しさは糖度だけではありません。糖度はあくまでも指標の一つ。食感や固さ、香りなど、感じ方はお客さんによって違います」と岩﨑さん。美味しさと健康にこだわって作られたトマトは、「味が濃い」と多くのお客さんに喜ばれています。ちなみに、美味しいトマトは実が青い時から星形に線の模様が入っているそうです。
「うちのトマトは土の力を最大限に活かして、子どものように育てています。ぜひ直売所に足を運んで、トマトの濃い味わいを楽しんでみてください」と岩﨑さんは、笑顔を見せていました。
■実際に食べてみました!
直売所での一番人気は、「みどり箱」と「あか箱」のセット(1箱1782円、税込。以下価格は取材時のものです)。驚くべきことに、どちらも品種と生育環境は全く同じなのだそうです。
今回は、それより少し小ぶりな「みどりS」と「あかS」の袋入りの2種類のトマト、中玉(大きめのミニトマト)、トマトジュースを購入し、ご厚意でいただいたヨーグルトソースとともに、帰宅してから頂いてみました。
「みどりS」(1袋680円、税込)のトマトは、果肉がぎゅっと締まっていて甘みだけでなく、トマトのうま味がとても濃厚。一言で表現するなら、とにかく味が濃く、力強い旨味わいがしっかりと感られました。
一方、「あかS」(1袋680円、税込)のトマトは、ゼリー部分が多くみずみずしい食感。丸ごと頂く際には、果汁が飛び出さないように注意が必要なほどです。さらっとした上品な甘さが特徴で、いくらでも食べられそう。
どちらも、生食で頂くのがオススメ。塩やドレッシングの必要はありません。
中玉(大きめのミニトマト)(1袋680円、税込)も、まるごと口に放り込んでみました。こちらも、「みどりS」や「あかS」に負けない、ミニトマトとは思えないほどの、みずみずしさとトマトの甘さやうま味が感じられました。とにかく味が濃くて、おやつ感覚でパクパクと食べてしまう美味しさです。

とまとや岩﨑の直売所で購入した中玉
茨城県桜川市の加工場に依頼して作っている「とまとじゅーす」(1本410円、税込)は、トマトの栄養と自然な甘みがそのまま凝縮されたような濃厚な味わい。トマトのみで作られ、塩などの添加物は入っていません。筆者はそれほどトマトジュースが得意ではありません。しかし一気に飲めてしまいました。ここまでダイレクトにトマトのうま味を感じられるトマトジュースは、生まれて初めてです。トマトジュースの既成概念が打ち砕かれる味わいでした。
そして、ご厚意でいただいた「とまとのヨーグルトソース」(1本896円、税込)。トマトのヨーグルトソースは初めて食べましたが、ヨーグルトの酸味と良くマッチします。イチゴジャムを思い起こさせるほどのトマトの甘みが絶妙で、デザートにぴったりの一品でした。

今回実食した「みどりS」「あかS」(上段左から)と、とまとじゅーす、ヨーグルトソース(下段左から)
ひと味違う絶品トマトを味わいたい方は、ぜひ直売所に足を運んでみてはいかがでしょうか。
住所:茨城県結城市田間867
営業時間:10:00~17:00(要追記)
定休日:毎週月・水曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)
直売所の営業期間:2月下旬~7月中旬 ※営業期間は目安なので、直接ご確認ください
電話番号:0296-35-3756(※地方発送はこちらの電話でのみ受付)
駐車場:あり
