文化勲章を受章した茨城県筑西市出身の陶芸家、板谷波山(1872~1963年)と、5月に79歳で亡くなった同市の漆芸家で重要無形文化財保持者(人間国宝)の大西勲さんを紹介する所蔵品展が同市丙のしもだて美術館で開かれている。「用から美へ 2人の巨匠(マエストロ)による技とちから」と題し、それぞれの分野で優れた作品を残した2人の計27点がそろう。12月22日まで。
波山の作品は22点で2017年に同市に寄贈された「神林コレクション」が中心。19世紀末に欧米で流行したアールヌーボー様式を取り入れた作品が目立つ。
生命力あふれるユリの描写が美しい「彩磁百合文花瓶」は、正面の咲き誇る姿に対し、背面にふっくらと芽吹くつぼみが表現されている。同館の学芸員、橋本空樹さん(28)は、波山の長女百合子さんに触れ「ユリと娘が重なるような思いがあったのではないか」とみる。
大西さんは、装飾を施さず漆を塗ることだけで仕上げる「髹漆」の人間国宝。ヒノキの板を薄く削って直径の異なる輪を作り、それを組み上げていく「曲輪造(まげわづくり)」は、「寸分の狂いのない厳格な技術」(橋本さん)を誇る。
大西さんの義父が指物師で、波山が郷里の高齢者に贈った「鳩杖」の柄の部分を手がけたという逸話も残る。今回は第14回日本伝統漆芸展で朝日新聞社賞に輝いた「曲輪造朱漆盛器」など5点を展示する。
ギャラリートークが11月10、24日、12月22日に行われる。問い合わせは同館(電)0296(23)1601。