茨城、栃木、群馬、そして埼玉や千葉の県境をとうとうと流れる「坂東太郎」の異名を持つ利根川。その流域に位置する茨城県五霞町で、初夏にしか見られないダイナミックな自然現象があるのをご存知ですか?
それは、体長1メートルを超える巨大な淡水魚「ハクレン」の大ジャンプです! 水面から次々と巨大な魚が飛び出す光景は、まるでパニック映画のようなド迫力です。この不思議でパワフルな県境エリアの風物詩をご紹介します。
宙を舞う巨大魚「ハクレン」とは?
「ハクレン(白鰱)」はコイ科の淡水魚で、もともとは中国を原産とする外来種です。成長すると体長1メートル、体重は10キロを超えることもある非常に大きな魚です。

目が口のラインより下についている少しユーモラスな顔立ちが特徴。大きな口を開けて水を吸い込み、植物プランクトンを食べるという、その巨体に似合わず穏やかな食性を持っています。
ハクレンが日本にやってきたのは明治時代(1878年ごろ)と言われています。当初は食用として持ち込まれましたが、川魚特有の泥臭さや、小骨が多いことなどから、消費者に受け入れられなかったようです。また植物プランクトンを大量に食べることからアオコ対策などの水質浄化の目的でも持ち込まれました。
全国の池などで養殖されていましたが、過去の台風や大洪水などで生けすから逃げ出した個体が川に流れ込みました。ハクレンの卵は、ふ化するまで川の中を数十キロにわたってプカプカと流れ下る特徴があるため、日本の短い川では海に流されてしまい、ほとんど繁殖できません。
しかし、日本有数の流域面積と長さを誇る「利根川水系」は、奇跡的にハクレンの繁殖条件に合致! そのため、現在では日本国内でも極めて珍しい大規模な自然繁殖地となっているのです。
なぜ五霞町に集まる? 舞台は利根川の「川妻」付近
これほど大きな魚が、なぜ五霞町周辺に集まってくるのでしょうか? 五霞町によると、「五霞町川妻付近は、ハクレンの自然産卵場所になっており、毎年6月から7月にかけて利根川の下流から産卵水域に集まって待機します。かなりの数のハクレンが1箇所に集まるため、ダイナミックなハクレンのジャンプが見られます」とのことです。
日本の河川でハクレンが自然繁殖するには、長い距離を流れる大河川という条件が必要です。五霞町の川妻付近は、その条件を満たす貴重な産卵スポット。そのため、初夏になるとハクレンの大群がこの浅瀬に密集するのです。
水面が沸き立つ! 大ジャンプの理由
産卵のために集まったハクレンたちは、あることをきっかけに一斉に宙を舞います。まずは、五霞町から提供されたこちらの映像をご覧ください! (以下、動画は全て2026年6月4日撮影、小林一郎氏提供)
水面から1〜2メートルもの高さまで、次々と飛び出す巨大魚たち。実はこれ、利根川にかかる鉄橋を走る東北新幹線や国道の橋を渡る車の通過音に驚いて、パニックを起こしているからなんです。
ハクレンはとても神経質な魚。1匹が音に驚いて跳ねると、それが連鎖反応を起こし、周囲の魚も次々と飛び跳ねる大ジャンプに発展します。
いつ行けば見られる? 遭遇確率を上げるポイント
「ダイナミックなジャンプを直接見てみたい!」という方へ、ハクレンのジャンプに遭遇しやすくなる条件をまとめました。
■時期は「6月〜7月」のまさに今!
単発のジャンプは時期を問わず見られますが、水面が沸き立つような連続ジャンプが起こりやすいのは、大群が集まる6月~7月の産卵シーズンに限られます。
■天候・水位は「まとまった雨のあと」
数日間雨が続いた後や、前日に大雨が降った後など、川が増水して水が茶色く濁っている時が一番活発になります。
■タイミングは「新幹線が通過する瞬間」が最大のチャンス
ジャンプの最大の引き金は水中に伝わる大きな音と振動です。そのため、すぐ近くの鉄橋を新幹線や電車が通過するタイミングが最大のシャッターチャンス! あらかじめ時刻表で新幹線の通過時間を調べておくと、シャッターチャンスを逃しにくくなります。
県境エリアの自然の神秘を感じよう
相手は自然の生き物なので、「条件が揃っていても見られない」「静かな日でも突然跳ねる」といった気まぐれさもハクレンの面白さ。だからこそ、大ジャンプに遭遇できた時の感動はひとしおです。
今度の週末はぜひ、カメラやスマートフォンを片手に、少し足を伸ばして五霞町の利根川沿いへ奇跡の瞬間を狙いに行ってみませんか?
