茨城県古河市の全中学校でプール授業が廃止へ 背景にある維持費問題や学校現場の課題とは?



古河市立三和中のプールの授業=7月、古河市東山田 古河市
古河市立三和中のプールの授業=7月、古河市東山田

茨城県古河市は、2026年度をもって全市立中学校(9校)における水泳の実技授業を廃止することを決定しました。自校のプールを使用する7校では今夏、「最後の水泳授業」が行われました。

生徒たちからは「みんなと楽しめる貴重な時間だった」「後輩ができなくなると思うと寂しい」と惜しむ声が漏れました。茨城県内初となるこの「プール授業廃止」には、どのような背景があるのでしょうか。

維持費の高騰と管理の手間が重荷に

古河市内の小中学校のプールは1960年代から順次建設されましたが、近年は老朽化による水漏れや水道管の破裂などが目立つようになっていました。2025年度に見込まれる維持費は、中学校9校だけでも計400万~500万円。厳しい財政事情の中で、修繕費や維持管理費の増加が大きな負担となっていました。

また、施設面だけでなく、近年の環境変化も影響しています。猛暑による熱中症リスクで授業が実施できない日が増えたほか、肌の露出を敬遠して授業を休む生徒も増加傾向にありました。授業中は2人以上の教諭の配置や休んだ生徒の自習を見守る教諭が必要であり、水の消毒・清掃といった管理の手間もかかります。

こうした状況から、市は「指導の面では続けたいが、資金や労力に対して見合った教育効果が得られない」と判断し、廃止に踏み切りました。

今後の水泳学習は「座学」へ移行

中学校のプールを廃止して浮いた経費は、小学校のプールの維持費などに回される方針です。

学習指導要領では、中学1・2年生の水泳は「必修」とされていますが、適切な施設の確保が難しい場合は実技を行わないことも認められています。その一方で、「水泳の事故防止に関する心得については、必ず取り上げること」と明記されています。

そのため古河市では来年度から実技の代わりに、水辺に潜む危険性やAED(自動体外式除細動器)の使い方、心肺蘇生法などを学ぶ「座学」に移行する予定で、現在具体的な内容を検討しています。

古河市役所総和庁舎(本庁舎)=同市下大野(資料写真)

古河市役所総和庁舎(本庁舎)=同市下大野(資料写真)

「命を守るスキル」をどう身に付けるか

中学校の関係者からは「現場の負担やリスクは大きかった」と理解を示す声がある一方、「プールの授業は自分の命をどう守るかを考える機会。座学だけで代替できるのか」と教育効果の低下を懸念する声も上がっています。

茨城県外に目を向けると、福井県鯖江市や愛知県大府市でも、老朽化や教員の負担を理由に中学校のプール授業が廃止されています。授業の代わりにペットボトルを使って浮く方法を教えたり、民間プールの無料券を配布したりと、各自治体で模索が続いています。

専門家からは「水の中で自分の命を守るスキルを身に付けるためには実技が必要」と体験の重要性を訴える声や、「市民と十分に話し合い、納得できる方針を出すことが大事」という指摘も出ています。

子どもたちの安全な学びの機会確保と、学校現場の負担軽減。この二つをどのように両立していくのか、地域全体で考えていく必要がある問題といえそうです。


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