いつの頃からか、来客への「お茶」は緑茶よりコーヒーが多くなりました。そればかりか、ペットボトル飲料が出されることも。気兼ねなく、手間いらずといったところでしょうか。茨城県八千代町の「松田製茶」は、厚みのある茶葉を製茶によってコク深く、濃厚な味と香りに仕立てる「猿島茶」の卸販売業者として1898(明治31)年に創業。代表の松田浩一さん(42)で5代目となる老舗です。
2003年に家業を継ぎ、10カ所5ヘクタールの茶畑で6品種の茶を栽培しています。玉露を作るように遮光ネットで木を覆い、お茶のうまみや甘みのもと、アミノ酸を凝縮し、渋みのタンニンを減じる「ブラックアーチ農法」にも取り組んでいます。「他との差別化、独自性を出すため」と狙いを説明してくれます。

松田製茶では約60種類のお茶を取り扱っています
ただ、近年のお茶離れは深刻。「われわれにとっては死活問題。ペットボトルのお茶飲料は伸びているが、煎茶は減少の一途。普段飲まない人にどうやって飲んでもらえるか」と課題を話します。
猿島茶の各種ティーバッグはもちろん、せんべい、うどん、そば、ジャム、あめ、つくだ煮まで加工商品を次々と開発。八千代町産のイチゴ、メロンを使ったアイスは一番人気です。最近はアスパラ茶や、もみ殻を原料にシリカ茶製造の相談もあったといいます。通信販売にも乗り出し、6次産業化に力を入れます。
事業拡大を図り、敷地内に焼き菓子用の加工場を整備。ほうじ茶、緑茶、和紅茶を配合した焼き菓子とパウンドケーキも製造しています。「消費者の求める物を探り、商品化したい」と目標は明確です。
それもこれも、加工商品を入り口に若年層には緑茶のおいしさに気付いてもらい、年配層には思い出してもらって、緑茶回帰のきっかけとなれば-との願いからです。
海外では抹茶フレーバーが人気を博し、抹茶の市場価格が高騰しているという。「コロナ禍で輸出が滞ったが、抹茶人気を追い風に、輸出にも関わっていきたい」とその目は世界を見据えています。
一方で本業はもちろん茶の製造、卸販売。「急須でお茶を入れ、ゆっくりと味わう。そうした時間が大切」と見つめる事務所の壁には企業理念「幸せな時間の創出」が掲げられていました。
所在地:茨城県八千代町水口113
営業時間:月-土曜が午前9時~午後5時、日曜は午前9時~正午
電話:0296-48-0174
ホームページ:https://matsuda-cha.com/