鎌倉時代以前から墓石材や建築材として使われてきた、花こう岩(御影石)の銘石「真壁石」。頑丈で風化しづらいのが特徴で、日本の風土にも合うことから、さまざまな建築物に使用されています。茨城県桜川市真壁町は、県の西部にある常陸三山(筑波山、加波山、足尾山)の懐に眠る真壁石が取れ、日本の三大石材産地の一つとして知られています。
そんな桜川市真壁町で石材業を営む成田隆之さんは、「成田石彫」の2代目代表を務めています。かつては石材店が1000店以上立ち並んでいた真壁の町も、ここ30年で500店以下に激減していると話します。石材自体も外国産の輸入ものが増え、値が張る国産の石がなかなか流通しない厳しい現状もあるそうです。
大胆かつ繊細、匠の技
そうした中で、伝統の技法を絶やさないようにと奮闘している成田さん。石の表面を一打ち一打ち「のみ」で仕上げる「のみ切り仕上げ」は、大胆かつ繊細で、高度な技術が必要とされる技法です。硬くごつごつと冷たいイメージの石に、軟らかさと温かさを加え、唯一無二の作品が出来上がる、匠の技です。
成田さんは、その技術を生かし茨城県芸術祭で2度入賞、テレビ東京のバラエティー番組「TVチャンピオン」の「全国石職人選手権」で準優勝した実績があり、「のみ切りの鬼」と称賛されています。
生命力そのものを表現
そんな華々しい経歴を持つ成田さんが、彫刻家としても特に力を入れて度々制作しているのがフクロウです。写真家・嶋田忠さんが20年以上前に撮影したシマフクロウに魅せられた成田さん。獲物を追う鋭い目つきや生命力そのものを表現したいと、900体以上のフクロウをこれまでに彫っています。
茨城県つくば美術館で2022年に開催された「第9回アール・パレ つくばアール・パレ展」でも、フクロウをかたどった作品を出品しました。フクロウへの思いは今も尽きることはないようです。
成田さんはお土産品としてフクロウの置き物を販売しており、こちらは桜川市ふるさと納税の返礼品にもなっています。また、観光客向け体験メニューとして、幸せと出会いを運ぶ「ふくろう作り体験」も随時受け付けています。こちらは、国産のコーガ―石(溶岩)を使用し、成田さんの指導のもと、実際に石を彫ってオリジナル作品を作ることができます(要予約)。
石燈籠や仏像、墓石や動物をかたどったモニュメント、ストーン家具などさまざまな石の彫刻に出合える「成田石彫」。一期一会を求め、皆さまも足を運んでみてはいかがでしょうか。
所在地:茨城県桜川市真壁町桜井313
電話:0296-55-0731または090-4598-9547
営業時間:午前9時~午後5時(定休日・日曜 ※不定休)
ホームページ:https://naritasekicho.com/