茨城県結城市の洋菓子店「アルチザン・パティシエ・イタバシ」は、交通量の多い国道50号から南に少し入った閑静な所にあります。店舗の脇に竹林が広がっており、板橋恒久オーナーシェフは、鎌倉時代の武家屋敷跡に茂るこの竹林に引かれて2006年に開業しました。
洗練されたインテリアや商品レイアウトが魅力的な店内は、天井が高く開放的な雰囲気です。併設されたガラス張りのカフェサロンから、青々とした竹林を眺めることができます。
ショーケースに並ぶ生菓子は、季節に合わせて13~15種ほど用意されています。
特に毎年9月下旬から登場する「モンブラン」を心待ちにしているファンは多く、今シーズンの販売がスタートしました。
手作業で、丁寧に、手間をかけて
店の看板メニューの一つ、モンブラン。そのマロンクリームに使用するのは、茨城県笠間市の小松農園から取り寄せた笠間和栗です。これを大きな釜でゆで、丁寧に皮をむいて裏ごしした後、クリームに仕上げます。全て手作業。栗特有のボソッとした食感を滑らかな舌触りにするのが難しく、毎朝必ず板橋オーナーシェフが調整しながら、最良の状態に仕上げています。
「アルチザン・パティシエ・イタバシ」では市販の栗ペーストを使わず、栗をゆでるところからスタートするため非常に手が込んでいるのが分かります。
モンブランは、注文を受けてから特製のマロンクリームを絞って提供されます。
繊細なメレンゲ菓子の土台に、無糖の生クリームを乗せ、その上にマロンクリームを絞ります。メレンゲは湿気を含むとしぼんでしまいます。そのため、食感と風味を最大限おいしく味わってほしいという思いから、モンブランの賞味期限を40分に設定しています。遠方から来店される方には、カフェで味わうことを勧めています。
「職人」の名にふさわしい味
作り立てのモンブランをカフェサロンでいただきました。
一口食べて、目を見開いてしまうほどの衝撃が走りました。サクッとした軽い食感のメレンゲが口の中でスッと溶け、こくのある生クリームと共に和栗の上品で素朴な甘さを際立たせます。マロンクリームは程よく滑らかで、栗本来の自然な風味が口の中で深まっていきます。メレンゲ、生クリーム、マロンクリームが見事に調和しています。こんなモンブランは初めてです。
「子どもの頃、秋空の下の運動会で食べた栗がおいしかった。それがこのモンブランの原風景であり原点。秋にはおいしい栗が実るのだから、それを使えばいい。手間はかかるけれど、そうしないとおいしいものはできない」と力を込める板橋オーナーシェフ。茨城県筑西市出身で、結城市に店を構える前は、フランスの名店「オテル・ド・クリヨン」や「トロワグロ」で研さんを積み、帰国して東京都内の有名店で製菓長を務めました。
店名に使用している「アルチザン」は、フランス語で「職人」を意味します。店の名前に恥じない菓子を提供していくという、板橋オーナーシェフの覚悟が伝わってきます。
当初モンブランは栗の季節限定で販売していましたが、栗の保存方法などが確立できたため春ごろまで提供できるそうです。
深まる秋、職人の心意気が詰まった笠間和栗のモンブランを味わってみませんか。
所在地:茨城県結城市結城8782-5
営業時間:午前10時~午後6時(カフェは午前11時~午後5時)
定休日:月曜・火曜
電話番号:0296-34-0070
ホームパージ:https://www.patissier-artisan.com/index.html
インスタグラム:https://www.instagram.com/artisan_patissier_itabashi/
※同店ではスタッフを募集しています。