グルメ
これは「関東風」?「関西風?」

茨城・境町の「うなぎ河岸本店」で、ウナギの関東風と関西風はどう違うのか、食べ比べてみました 



2024年夏の「土用の丑の日」は7月24日と8月5日でした。この日にウナギを食べた方も多いと思いますが、近年は価格が高騰し、庶民にとってすっかり高嶺の花になってしまいました。

そんな中、茨城県境町長井戸に8月8日、「うなぎ河岸本店」が開店しました。茨城新聞の記事によると、「関東風と関西風の焼き方が選べる」ということです。ウナギ大好きの筆者、とりぷれエリアに関東風と関西風の食べ比べができるお店がオープンしたとあれば、行かないわけにはいきません!

2024年8月8日にオープンした「うなぎ河岸本店」。駐車場も広々としています=境町

2024年8月8日にオープンした「うなぎ河岸本店」。駐車場も広々としています=境町

まずはウナギの関東風と関西風の違いをまとめてみました

とはいえ、関東風しか食べたことのない筆者。まずは予習しようと、関東風と関西風の違いを調べてみました。

開き方 焼き方 特徴
関東風 背開き 蒸し焼き 蒸すことでふっくら柔らかくなり、大きく見える、調理時間が短縮できる
関西風 腹開き 直火焼き 表面がサクッ、中がふんわりな仕上がりに、焼く時間が少し長い

ほかにも、関東で背開きにするのは腹開きが武士の切腹を連想させるからとか、せっかちな江戸っ子に早く提供しようと事前に白焼きにしていたという説があります。

一方、関西風はどうしても焼きに時間がかかりますが、それにより大阪商人は商談の時間を長く取れ、腹開きにすることで「腹を割って話せた」とする説もあります。

調べれば調べるほどさまざまな情報が出てきます。真偽はともかく食べ比べたい! というわけで境町に向かいました。なお同店では、ウナギの開き方はいずれも同じですが、メニューに「関西風」と明記してあるもの以外は、関東風と関西風に焼き方を分けて提供しています。

お店のご厚意で焼き場を撮影させていただきました。職人さんが炭火でウナギを焼いています=境町

店のご厚意で焼き場を撮影させていただきました。職人さんが炭火でウナギを焼いています=境町

創業の地で伝統復活プロジェクトののろし

「うなぎ河岸本店」は、地元で古くから親しまれてきた「うなぎ料理」を再び境町のグルメの一つにしようと、町が取り組む「利根川うなぎ復活プロジェクト」の一環として整備しました。茨城県古河市に本社がある「坂東太郎グループ」が指定管理者になり運営しています。1975(昭和54)年に開店した同グループ1号店の場所にあり、店頭には記念の看板が立っていました。グループ創業の地で伝統の料理を復活させるプロジェクトの、のろしを上げる取り組みです。

墨跡鮮やかに「発祥の地」と書かれた看板=境町

墨跡鮮やかに「発祥の地」と書かれた看板=境町

ウナギだけじゃない、多彩なメニュー

のれんをくぐり、白木のまぶしい店内に入ります。テーブル席だけでなく、座敷やカウンター席も用意されており、さまざまな状況で利用できそうです。店員さんによると、この日は宮崎県産のウナギが供されるとのことでした。メニューを見ると、ウナギだけでなく茨城県のブランドそばである「常陸ひたち秋そば」や、一品料理、宴会料理など多彩なメニューが並んでいます。テイクアウトも可能だそうです。

当初はリーズナブルな価格のものを注文しようと思っていたのですが、せっかくなので張り込んでみました。注文したのは「上うなぎ重」(税込み6390円)。関東風と関西風を1つずつ頼み、同行者とシェアすることにしました。ほかに肝吸い、漬物、デザートが付きます。

白木が鮮やかな真新しい店内=境町

白木が鮮やかな真新しい店内=境町

「ふっくらの関東」と「香ばしい関西」

待つこと15分ほどで、注文の品が運ばれてきました。お重のふたは完全には閉まっておらず、ウナギがはみ出していて、いやが上にも期待が膨らみます。

まずは「関東風」から頂きます。タレに浸かって輝くウナギに箸を入れるとスッと通り、柔らかく焼かれているのが伝わってきます。口に含めば、慣れ親しんだふっくらとした食感と共に、タレの香りが鼻に抜けていきます。慣れ親しんだ風味が口中に広がり、幸せな気持ちに包まれました。

こちらが関東風。ウナギがお重から飛び出しています=境町

こちらが関東風。ウナギがお重から飛び出しています=境町

次は筆者も初体験の「関西風」を頂きます。箸を入れると「関東風」より少し抵抗を感じます。焼き時間の違いでしょうか、見た目は焼き色が少し濃いようにも思いましたが、それほど違いは分かりません。しかし口に含んだ瞬間、その違いを思い知らされました。「関西風」は皮や身の食感が明らかに異なります。「ふっくら」ではなく「香ばしい」というのでしょうか。ほどよくパリパリに焼かれた皮も、その存在感を主張してきました。

関西風はこちら。ビジュアルが似ているので何度も確認しました=境町

関西風はこちら。ビジュアルが似ているので何度も確認しました=境町

食事の提供だけでない心遣い

重箱の底に敷き詰められたご飯の存在も忘れてはいけません。店で使用している白米は全て茨城県産とのこと。ウナギをご飯と一緒に食べると、脂が程よく落ちた「関東風」はより柔らかな食感に。「関西風」は白米の香りにウナギの香りが加わり、より強い香ばしさを感じます。ウナギの焼き方が異なるだけでこれほどの違いが出るとは驚きでした。

後は一気に食べ進めます。香り強めのさんしょうを途中で加えることで、「関東風」も「関西風」もアクセントが出て、さらに美味しく、箸を進めるスピードも文字通りうなぎ登りとなり、あっという間に完食してしまいました。

最後はデザートの「メロンシャーベット」でさっぱりと締めて、今回の食べ比べは幕を下ろしました。

締めのメロンシャーベットで、さっぱり!=境町

締めのメロンシャーベットで、さっぱり!=境町

店の外に出ると、わずかに雨が降っています。おかみさんが、車まで傘を差して送ってくださいました。単に食事を提供して終わり、ではない心遣いに感激しました。

この地域に伝統の川魚料理の文化が復活し、さらに全国にその名を響かせてほしいと思わずにはいられませんでした。

うなぎ河岸本店
住所:茨城県猿島郡境町長井戸267-1
電話:0280-23-5441
営業時間:11:00~21:00(ラストオーダー20:30)年中無休
ホームページ:http://bandotaro.co.jp/shop/unagigashi/

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