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自分が楽しくなければリスナーにも伝わらない 小山市でラジオパーソナリティとして生きる



栃木県小山市で開局6年を迎えたコミュニティFM「おーラジ」。鈴木陽子さんは子育てのかたわら、開局当初からおーラジパーソナリティとして、リスナーに小山市内のローカルな情報を届けています。パーソナリティになるきっかけ、仕事への思いなどをお聞きしました。

番組制作、営業、音響まで

「おーラジ」のスタジオは、JR小山駅西口のロブレの4階にあります。観覧スペースからは、ガラス越しに生放送中のパーソナリティの姿を見ることができます。

ひときわ明るく、高くよく通る声でリスナーに語りかけているのが鈴木さん。現在、週に10時間ほどの番組を担当しています。

パーソナリティとして「しゃべる」ことはもちろん、番組で伝える内容のネタ選びから広告営業、ミキサー(音響)まで、番組づくりに関わることはほぼすべてこなします。決して華やかなだけの仕事ではありませんが、表情は充実感に満ちています。

歌手を目指した10~20代

鈴木さんは宮城県仙台市出身。といっても「みなさんがイメージするような仙台ではありません」。仙台市南部の比較的のどかなエリアで育ちました。

歌声を褒められることが多く、高校卒業後は歌手になることを目指しました。仕事をしながらボイストレーニングに通い、都内でのオーディションに参加する日々。そこで、周囲との「覚悟の違い」を痛感したといいます。

「成功するのは一握り。小さい頃からの夢でしたが、運も才能も必要ですし、なにより何としても成功するという熱量がなかったんでしょうね」

あるとき、ボイストレーニングの先生の紹介で、仙台市内のコミュニティFMが音楽番組のパーソナリティを探していることを知ります。オーディションに合格し、週に1回の番組を受け持つことになりました。

「音楽活動をしていたこともあって、(曲の紹介などで)話す内容には困りませんでした。自分が話したことに反応をもらえるうれしさも感じました」。忘れられない経験でした。

移住先で見つけた「募集」

仙台で番組パーソナリティを約1年間担当した後、鈴木さんは結婚を控えて小山市に移住します。2008年のことでした。

娘の出産を経て、スーパーでパート勤務をしていた2017年春。家族が「小山市に新しくできるコミュニティFM局がパーソナリティを募集している」と教えてくれました。

仙台での楽しかった1年、人前で話す仕事へのあこがれ-。家族の後押しを受けて応募し、オーディションに臨みました。

「履歴書の特技に『歌』と書いたら、オーディションで実際に歌うことになって。懐かしいですね」

結果は見事合格。晴れて、その年の11月に開局する「おーラジ」の初代パーソナリティの一員になったのです。

病気でも、やりたいことを

開局当初のばたばたも乗り越え、「家族のよう」な同僚のパーソナリティたちと、局の歴史を刻んできました。

うれしかったことがあります。番組内で自身が患う1型糖尿病について話した後のこと。リポート先で「鈴木さんでしょ」と声をかけられました。

「うちの家族も同じ病気で、いつも鈴木さんに元気をもらっているんだよ」。リスナーからの言葉に、胸が熱くなりました。

「医療費が高くてさー、とかそんな話なんですけどね。だれかが少しでも元気になってくれるのであれば、ありがたい仕事に就かせてもらっているなと思います」

1型糖尿病という病気であっても、やりたいことはできる。電波を通して、そんなメッセージを伝えたいといいます。

この街の魅力を伝えたい

移住してきてから15年あまり。小山市の魅力を発信したいという思いも人一倍です。

「(引っ越してくる前は)小山は人が冷たいとか内向きだとか言われましたけど、仲良くなってみると、全然そんなことはなくて。移住者も多くて、柔軟性の高い街だと思います」

自分が知っている小山の素敵なお店やイベント。番組では実際に足を運んで、リポートする機会も多くあります。

「まずは自分が楽しむこと。自分が興味のあることじゃないと、聞く人にも伝わらないはずです」。持ち前の明るさには、そうした思いも込められています。

「話す」仕事をこれからも

最近では、こんなことも。学校行事の司会をすることになった小学5年生の娘から「ママ、教えて」と相談を受けたのです。

年頃だからか、番組の感想や相談事を口にしてくれる機会は決して多くありません。自分の仕事ぶりを認めてくれているように感じて、なおさら、仕事にも熱が入ります。

2021年からは個人事業主になり、「おーラジ」パーソナリティとしての顔に加えて、司会やナレーションの仕事を受けています。

「自分の小学校の卒業アルバムを見返したら、将来の夢に『アナウンサーになりたい』と書いていました。そう書いた記憶はないのですが、やりたいことをやれているのかもしれません」

歌手になるという夢を追った10~20代。結婚、出産を経て、44歳になった今、もうひとつの夢をかなえています。

◇ ◇

鈴木さんがパーソナリティを務めるコミュニティFM「おーラジ」は、小山市内などでFM77.5MHzで受信できるほか、コミュニティFM向けの配信プラットフォーム「FM++」で世界中から聴くことができます。

「おーラジ」のホームページ(https://www.o-radi775.jp/)では、番組や加盟店などに関する情報が掲載されています。


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