見た目はちょっとアレだが味は… 茨城・栃木・群馬の郷土料理しもつかれ(すみつかれ)を皆で作って食べ比べてみた



北関東で食べ継がれるしもつかれ(すみつかれ) グルメ
北関東で食べ継がれるしもつかれ(すみつかれ)

北関東の郷土料理の一つに「しもつかれ」があります。正月料理で残ったサケの頭、節分でまいた豆と根菜に酒粕などを加えて煮込んだもので、農林水産省のサイトうちの郷土料理栃木県全域茨城県県西部群馬東毛地域の味としてそれぞれ掲載されています。つまり「とりぷれエリアの郷土料理」と言っても過言ではありません。

しかし残念なことに、「しもつかれ」「見た目」でネット検索すると、「見た目がヤバい料理」などと面白おかしく紹介されています。確かに、食欲をそそられる見た目ではありません。

食材を使い切り、フードロスを防ぐ

茨城では、とりぷれエリアの県西地域が本場で、「すみつかれ」とも呼ばれています(以下すみつかれで統一)。初午はつうまの日に合わせて作り、赤飯と一緒に稲荷神社に供えて、家内安全や火の用心などを願う風習がありました。実は食材を無駄なく使い切る、「サステナビリティ」な料理なのです。

稲荷神社(資料写真)

稲荷神社(資料写真)

本日2月6日は2025年の初午です。それに先立ち、茨城県西地域に住むとりぷれライター小波来こなみきさんのお宅で、小波来さん、starsiaさんとすみつかれ調理にチャレンジし、試食してみました。果たしてうまくできたのでしょうか。

「おふくろの味」を再現

とはいえ、おじさんライター3人では心もとないため、小波来さんのお母さん、管理栄養士の資格を持つめい御さん、さらにいとこの女性と、強力な助っ人3人をお呼びしました。そして小波来さんが調理補助、starsiaさんが撮影・記録、筆者がその他雑用ということで、事実上、小波来家の女性たちに丸投げです。

一言で「すみつかれ」と言っても、家庭ごとにさまざまな作り方、味があります。今回は小波来家の「おふくろの味」を再現していただきます。

それでは、アレキュイジーヌ!(フランス語で調理開始!)

今回の調理に使用した材料

今回の調理に使用した材料

材料は、サケの頭、皮を取った節分の豆(茶碗1杯)、ダイコン(大)1本、ニンジン2本、油揚げ5枚、酒かす300グラムです。油揚げを使うのは、お稲荷様にお供えするからでしょうか。

余談になりますが、筆者はニンジンが得意ではありません。でもすりおろしてしまえば何とかなります。

サケの頭は断ち割ったものを事前に下ゆでしてあります。事前に一手間かけていただいたことで、生臭さが取れ、調理時間が大幅に短縮されました。

まずダイコンとニンジンの皮をむき、「鬼おろし」ですりおろします。これを使えば粗めにおろせるので水分が少なくなり、繊維などのざくざくとした食感を楽しむことができます。

鬼おろしですりおろしたダイコン。かなり粗めです

鬼おろしですりおろしたダイコン。かなり粗めです

この作業と並行して、サケの頭を圧力鍋で30分ほど煮ます。圧力鍋から勢いよく立ち上る蒸気とともに、台所がサケの香りに包まれます。

圧力鍋で30分煮込んだサケの頭。骨まで柔らかくなっています

圧力鍋で30分煮込んだサケの頭。骨まで柔らかくなっています

サケの頭が骨まで柔らかくなったら、大きめの骨を取り除き、別の鍋にサケと煮汁、すりおろしたダイコンとニンジン、さらに節分の豆、細かく切った油揚げ、酒かすを加えて再び火にかけます。

サケと煮汁、酒かす、豆、油揚げを投入!

サケと煮汁、酒かす、豆、油揚げを投入!

焦げ付かないように鍋を時々かき混ぜながら煮込み、最後に砂糖と米酢、しょう油で味を調えます。

焦げ付かないよう、時々かき混ぜます

焦げ付かないよう、時々かき混ぜます

およそ1時間ですみつかれが出来上がりました。冷めないうちにではなく、冷ましてからいただきます。お好みで、もっと煮て水分を少なくしてもいいそうです。

事前のサケの仕込みには、少し時間がかかりますが、複雑な手順や特別な調理技術が必要なわけでもなく、1時間ほどで意外に簡単に調理が終わりました。

4種類を食べ比べ

今回は、栃木県真岡市と下野市の家庭で作ったすみつかれ計3種類をめい御さんらが持ってきてくれたので、ぜいたくにも4種類を食べ比べます。

ずらりそろった、4家庭で作られたすみつかれ。それぞれ少しづつ見た目も異なります

ずらりそろった、4家庭で作られたすみつかれ。それぞれ少しづつ見た目も異なります

まずは、まだほんのりと温かい、小波来さんのお母さんお手製すみつかれから。食わず嫌いの筆者はすみつかれを食べるのは初めてです。

とはいえ、写真で見た場合と異なり、今回は調理の過程を見ていますし、台所にはいい匂いも漂っているので、「物体X」を生成してしまった、というやらかし感は全くありません。

スプーンで口に運ぶと、サケと野菜、酒かす、そして米酢が混然一体となって、事前にイメージしていた切り干しダイコンやおからのような味とは異なる、まさに初体験の味が口中に広がります。

冷まして、冷蔵庫で半日から1日くらい保存すれば、さらにこなれた味になるでしょう。やはり主役はサケとダイコン。甘酸っぱい味がごはんのおかずというよりも酒、とりわけ日本酒のさかなに最適だと思いました。

資料写真

資料写真

他家のすみつかれも試食します。こちらはより熟成されていますが、さつま揚げが入っているもの、汁が多めのもの、少ないものなど、それぞれが個性を主張しています。食べる人の好みであり、それぞれのご家庭に伝わる味なのでしょう。どれもおいしくいただくことができました。

小波来さんの所の保護猫はすみつかれがあまり好きではないらしく、そっぽを向いてしまいました

小波来さんの所の保護猫はすみつかれがあまり好きではないらしく、そっぽを向いてしまいました

伝えていってほしい料理

「七福神めぐり」ならぬ「七すみつかれ食べ比べ」。民間伝承で、すみつかれを7種類(7軒分)食べると、中風や風邪などにかからなくなるとされます。今回は一気に4軒分のすみつかれを堪能することができました。

小波来さんのお母さんにお土産のすみつかれをいただき、帰宅してから辛口の日本酒と共に味わうと、通の酒飲みになったような気分になりました。

長く伝え続けていってほしい郷土料理です。

ごちそうさまでした。


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