里山に展示された彫刻の数々 桜川で「雨引の里と彫刻展2025」 自転車で全作品を巡ってみました 茨城県桜川市



里山を舞台にした「雨引の里と彫刻展」 桜川市
里山を舞台にした「雨引の里と彫刻展」開幕

里山を舞台にした「雨引の里と彫刻2025」が茨城県桜川市で始まりました。自転車で巡ってみました。

雨引の里と彫刻

「雨引の里と彫刻」は1996年に大和村(現桜川市)の石彫家たちが立ち上げた野外彫刻展です。
これまでに12回開催され、美しい里山の中にさまざまな作品が飾られてきました。

前回(2022年)作品「筑波嶺の産土神の御座」

前回(2022年)作品「筑波嶺の産土神の御座」

この彫刻展の特徴は、作家自らが展示場所を探し、風景とともに一体感のある作品に仕上げることにあります。

今回も雨引の大地、森、神社、廃屋などに35点の作品が展示されています。

🚲自転車で巡る

秋晴れに恵まれた9月下旬に彫刻展を見学しました。

まずはインフォメーションのある、桜川市羽田の市大和ふれあいセンター「シトラス」へ。

桜川市大和ふれあいセンター「シトラス」=桜川市羽田

桜川市大和ふれあいセンター「シトラス」=桜川市羽田

ここでマップと作品の意図が書かれた「作家のひとこと」をいただきます。

マップと「作家のひとこと」

マップと「作家のひとこと」

全作品を巡るコースは約14キロメートル。レンタルサイクル(有料200円)も用意されています。

筆者は持参した折り畳み自転車で午前11時、作品巡りスタートです。

一点一点に見入る

マップを見ながら自転車をこぎます。作品を案内する看板が道路沿いにあり、迷うことなく巡ることができます。

作品展示場所を案内する看板

作品展示場所を案内する看板

主だった作品を紹介します。作品の意図は写真のキャプションに書きます。

里山を気持ちよく走っていると、森の中に作品がありました。

竹と鉄筋で作られた作品「野放しの周波数」です。いきなり不思議な世界に引き込まれました。

ゼレナク シャンドル「野放しの周波数」 竹の自然な柔軟性と鉄筋の工業的な強度の対比が、自然と人間の関係を象徴しています。自然環境における調和と不協和音につての考察を促します(一部抜粋)

ゼレナク シャンドル「野放しの周波数」 竹の自然な柔軟性と鉄筋の工業的な強度の対比が、自然と人間の関係を象徴しています。自然環境における調和と不協和音につての考察を促します(一部抜粋)

見晴らしのよい開けた場所には木で作られた作品「鬼人の弓舞」。今にも動き出しそうな迫力があります。

津田大介「鬼神の弓舞」魔陀羅(マダラ)鬼神が雨引の里の収穫祭に降臨し、弓舞う

津田大介「鬼神の弓舞」 魔陀羅(マダラ)鬼神が雨引の里の収穫祭に降臨し、弓舞う

9月下旬はそばも白い花を咲かせています。そば畑の前にはコルテン鋼の作品「自然の音に耳をすます:非同期」。そば畑と美しく調和しています。

Who「自然の音に耳をすます:非同期」加波山を背に蕎麦畑に佇み耳をすます 見えない音 感じる空気 うつろう光 それら全てが同じリズムを刻むことはない それでも心地よい

Who「自然の音に耳をすます:非同期」 加波山を背に蕎麦畑に佇み耳をすます 見えない音 感じる空気 うつろう光 それら全てが同じリズムを刻むことはない それでも心地よい

目の前に筑波連山が広がる大地には木の作品「ここにあることー可変」。作品とももに一日の変化を楽しめるようです。

高梨裕理「ここにあることー可変」ここから眺める山の連なり 筑波山~きのこ山~加波山~燕山~雨引山~御嶽山~丸山~羽田山 夕方になると赤く染まります

高梨裕理「ここにあることー可変」 ここから眺める山の連なり 筑波山~きのこ山~加波山~燕山~雨引山~御嶽山~丸山~羽田山 夕方になると赤く染まります

里山から集落に入ると、合板と布で作られた作品「そらいろのリボン」がありました。ベンチにもなっていて座ることができます。とてもユニークな作品です。

志賀政夫「そらいろのリボン」空から舞い降りた帽子かな?そらいろのリボンを付けた帽子です。みんなで座って空を眺めましょう

志賀政夫「そらいろのリボン」 空から舞い降りた帽子かな?そらいろのリボンを付けた帽子です。みんなで座って空を眺めましょう

集落内には中根ふるさとコニュニティーセンターがあり、ここに車を止めて周辺の作品を歩いて見にいくこともできます。

中根ふるさとコミュニティーセンター=桜川市高久

中根ふるさとコミュニティーセンター=桜川市高久

センターの軒下には古着、廃材などで作られた作品「記憶の花束」がありました。一瞬ギョッとしましたが、役目を終えたものへの感謝を伝えているようです。

西成田洋子「記憶の花束」それぞれの役割を果たしたモノたちが、今、新たな表情を纏い抱えきれない花束となった

西成田洋子「記憶の花束」 それぞれの役割を果たしたモノたちが、今、新たな表情を纏い抱えきれない花束となった

近くには、石とセメントで作られた作品「いにしえのお慶び」。神社にお供えしているかのようなユニークな作品です。

大栗克博「いにしえのお慶び」 中根地区には時代を感じさせる長屋門が多く、その門は人々のくらしを見守り、人を迎え入れ送り出してきたものでしょう。心をひかれ歩いていると、子供のころの記憶がよみがえりました(一部抜粋)

大栗克博「いにしえのお慶び」 中根地区には時代を感じさせる長屋門が多く、その門は人々のくらしを見守り、人を迎え入れ送り出してきたものでしょう。心をひかれ歩いていると、子供のころの記憶がよみがえりました(一部抜粋)

また、集落内の空き地には石の作品「Root」。作品が置かれると空き地も素敵な展示場になります。

渡辺治美「Root」植物を地で支えるたくましい生命力に満ちた根。深い底から噴き出すようにうねり延びる。脈動する命の鼓動を表現したいと考えた。天災及び争いの絶えない地球。生きものの命の源とは何かと探りたくなる

渡辺治美「Root」 植物を地で支えるたくましい生命力に満ちた根。深い底から噴き出すようにうねり延びる。脈動する命の鼓動を表現したいと考えた。天災及び争いの絶えない地球。生きものの命の源とは何かと探りたくなる

集落を出て再び里山へ。

これまでの作品とはちょっと異なるものが目に留まります。ステンレススティールの作品「天地を巡るもの/手品師」です。球体に自分が映り込み、自分も作品の一部になったかのようです。

戸田裕介「天地を巡るもの/手品師」田んぼのなかをあっちへゴロゴロこっちへゴロゴロ。転がる玉を長時間露光で撮影すれば一筆書きの絵が景色一杯浮かび上がる

戸田裕介「天地を巡るもの/手品師」 田んぼのなかをあっちへゴロゴロこっちへゴロゴロ。転がる玉を長時間露光で撮影すれば一筆書きの絵が景色一杯浮かび上がる

最後に紹介するのは廃屋に飾られた作品です。鉄線、漆で作られた作品「秋の庭」です。静かな空間にたたずむ鮮やかな赤のオブジェに息吹を感じます。

小日向千秋「秋の庭」 季節はめぐり秋の庭に落ち葉が降り積もる。木々はその営みを繰り返し、かつての人の気配を漂わせながら成長を続けている。庭に佇み、木々の声に耳を傾けてみたいと思う(一部抜粋)

小日向千秋「秋の庭」 季節はめぐり秋の庭に落ち葉が降り積もる。木々はその営みを繰り返し、かつての人の気配を漂わせながら成長を続けている。庭に佇み、木々の声に耳を傾けてみたいと思う(一部抜粋)

見学を終えて

午後2時、全ての作品の見学を終えて、桜川市大和ふれあいセンター「シトラス」に戻りました。ちょうど3時間のサイクリングでした。

途中で自転車で巡る人たちとも出会い、作品から感じるもの語り合ったりすることもできました。
そして何より、美しい里山の風景、そこに置かれた彫刻との出合いは非日常的な体験になりました。

彫刻展を自転車で巡る人たちがたくさんいました

彫刻展を自転車で巡る人たちがたくさんいました

秋も本番です。サイクリングしながら「雨引の里と彫刻2025」を楽しんでみてはいかがでしょう。バスツアーやワークショップも予定されています。

「 雨引の里と彫刻2025」
会場:茨城県桜川市羽田989-1ほか
会期:2025年11月23日まで
電話:0296-20-6300(桜川市大和ふれあいセンター「シトラス」)
バスツアー:10月12日、11月9日(要予約・有料500円)
ワークショップ:10月26日
ホームページ:雨引の里と彫刻 / AMABIKI

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