茨城県結城市の名物の一つに「ゆでまんじゅう」があります。筆者は隣の筑西市に住んでいた2016年に初めて食べました。ゆでまんじゅうの存在は認識していましたが、「ゆでたまんじゅうなんて邪道」と軽視していたのです。でも完全に食わず嫌い。手のひらを返して大ファンになりました。とてもおいしかったのです。
今回は、結城市内でゆでまんじゅうを製造・販売している和菓子店6店舗を歩いて回り、そのうち5店で食べ歩き・食べ比べしてみました。店とコースは結城市公式ホームページの「ゆでまんじゅう食べ歩きマップ」を参考にしました。
みこしに間に合うように
ゆでまんじゅうは、江戸時代末期に疫病がまん延した時に、それを収束させようと当時の領主がみこしを奉納し、その際に民衆にゆでまんじゅうを振る舞ったのが始まりとされています。
また、健田須賀神社の夏の大祭の日に、無病息災などを願ってお供えするまんじゅうを各戸が作るに際して、蒸していてはみこしが来るのに間に合わず、短時間で作るためにゆでるようになり、それが広まったとも言われています。
小麦粉、餅粉、小豆、砂糖などが原材料の素朴なまんじゅうで、生地の水分が多く、つるっとしてもちっとした食感が特徴です。

「ゆでまんじゅう」の説明(真盛堂)
桜の花びらが舞い散る、4月の晴れた土曜日、午前11時にJR水戸線結城駅の北口をスタートしました。本当は午前9時に始めたかったのですが見事に寝坊してしまい、2時間遅れになりました。

JR水戸線の結城駅北口からスタートしました=結城市結城
駅前通りを北上します。しょうゆと酢が人気の「蔵元 小田屋」が右手に見えてきます。筆者もここの酢を毎日大さじ1杯飲んでいます。

ワンちゃんが出迎え? 「蔵元 小田屋」=結城市結城
真盛堂で知った衝撃の事実
スタートから10分ほどで最初の目的地「菓子処 真盛堂」に着きました。ここは隣で和風カフェも営業していて、女性客でにぎわっています。

「菓子処 真盛堂」。「ゆでまんじゅう」ののぼりも立っています=結城市結城
でも本日のお目当てはゆでまんじゅう。店の前にのぼりも立っています。入店し、ほかの商品には目もくれずにただ一言「ゆでまんじゅうください!」。
今回は、1店舗につきゆでまんじゅうを2個購入することにしています。1個は「食レポ」用、もう1個は観察・撮影用です。もちろん2個ともきちんと味わいます。
レジで商品をやり取りしつつ、おかみさんとおぼしき女性に何気なく問い掛けました。「ゆでまんじゅうって、ゆでて作るんですよね」。すると衝撃の答えが返ってきたのです。「いいえ、昔はゆでていましが、今はゆでないで蒸しています。うち(真盛堂)だけでなく、全てのお店でそうしていますよ」ということです。
衝撃の事実というより単にこちらが無知だっただけのようです。確かに、とりぷれに以前配信した「結城に伝わる『ゆでまんじゅう』、結城二高生が調理にチャレンジ!」という記事に、まんじゅうをゆでる工程がなかったのを記憶しています。でもそれは、学校で大勢の生徒を相手に調理時間を短縮するためのものだと思い込んでいました。ちなみにその時の調理指導は真盛堂の石川雄一郎専務でした。
結城に伝わる「ゆでまんじゅう」、結城二高生が調理にチャレンジ!
そう、ゆでまんじゅうはゆでないのです。ただし、「かつてゆでていた時のような食感をいかに出すかが腕の見せどころ」なのだそうです。確かに9年前に初めて食べたゆでまんじゅうは、まさにゆでて調製したような、官能的な口当たりでした。水を多めに使うことや、蒸し器など設備の機能アップもあって、それが可能になっているということです。
店を出て、ゆでまんじゅうをぱくり。寝坊した影響でこの日はまだ何も食べておらず、昼食は必然的にゆでまんじゅうになります。真盛堂のそれは、皮のひだが大きく厚め。中は甘さ控えめの粒あんで、なかなか食べ応えがあります。

「菓子処 真盛堂」のゆでまんじゅう。皮にひだ、凹凸があるのが特徴
1個140円(税込み)。当日が消費期限でした。

「菓子処 真盛堂」のゆでまんじゅう(結城市商工観光課提供)
昭和レトロ、菓子舗なか川
次の目的地は、「菓子舗 なか川」です。来た道を戻り、最初の交差点を左折。「真盛堂」から歩いて2分ほどの所にあります。

「菓子舗 なか川」の外観=結城市結城
昭和の香り漂う外観。扉を開けてショーケースをのぞき込んでいると、おかみさんが出てきて応対してくれます。店は明治時代の創業で、それ以前は別の場所でお茶屋をしていたそうです。
ここのゆでまんじゅうは、白ではなくグレーのようなオリーブのような色になっていて、上に白ごまがかかっています。やや小ぶりながら、持つと重量感があります。

「菓子舗 なか川」のゆでまんじゅう。白ごまがかかっているのが特徴
皮はつるつる。粒あんの甘さは控えめ、白ごまのアクセントが好印象でした。1個110円(税込み)。
紅白2色、富士峰菓子舗
3店目の「富士峰菓子舗」は、「なか川」の前の通りを東に2分ほど歩いた所にあります。こちらも昭和レトロといった外観です。

「富士峰菓子舗」の外観=結城市結城
先日、同店の桜もちの記事をとりぷれに配信させていただきました。
この日はお目当てはもちろんゆでまんじゅう。「富士峰菓子舗」のゆでまんじゅうは2種類あり、皮が白いのは粒あん、赤いのはこしあんを包んでいます。

「富士峰菓子舗」のゆでまんじゅう。紅白2種類あります
通年販売するゆでまんじゅうは店の主力商品ということで、1個120円(税込み)。値上げしたいのをぐっとこらえて、当面は価格据え置きで頑張りたいとご主人。跡継ぎの息子さんが頑張ってくれており、「(店は)あと30年は安泰」と笑顔を見せてくれました。
粒あん入りのゆでまんじゅうをほおばると、皮は薄め、一般的な蒸しまんじゅうに近い食感で、あんの量もたっぷりでした。一方、こしあん入りの方は、あんがしっとりしています。どちらがいいかは好みでしょう。

「富士峰菓子舗」のゆでまんじゅう。皮が白いのは粒あんです(結城市商工観光課提供)

左から真盛堂、なか川、富士峰のゆでまんじゅう
ゆでまんじゅう食べ歩き・食べ比べはまだまだ続きます。
結城名物「ゆでまんじゅう」 和菓子6店を回り食べ比べてみた〈下〉 季節限定ににっこり
所在地:茨城県結城市結城29
定休日:木曜
電話:0296-33-2301