「小学生の孫が短冊にビール屋さんになりたいって書いてくれてね」と嬉しそうな塚越さん ひと
「小学生の孫が短冊にビール屋さんになりたいって書いてくれてね」と嬉しそうな塚越さん

元校長66歳塚越さん、クラフトビールへの挑戦 「受け継がれる味残したい!」 ナマズのラベル 地元結城市で奮闘



生涯お酒を飲み続けたいと切望する筆者が勇んで取材に向かった先は茨城県結城市中央町の「結城麦酒ビール」。JR結城駅南口から徒歩10分、ナマズのキャラクターがプリントされた紫色ののれんが目印の、クラフトビール醸造所です。

ナマズのキャラクター「ギギ丸」も醸造所の中からお出迎え

ナマズのキャラクター「ギギ丸」も醸造所の中からお出迎え

代表の塚越敏典としのりさん(66)さんは、生まれも育ちも結城市で、元校長。教員生活37年間の大半をこのまちで過ごし、結城中学校の校長を最後に60歳で定年退職しました。

徳川家康の次男で後に結城家に養子に出された結城秀康の幼名「於義丸おぎまる」は、ナマズの一種に由来しているとも言われています。塚越さんは「結城から福井藩主となった秀康のように、ここから全国へおいしいビールを発信したい。さらに自分が挑戦する姿が“震源”となり100年時代を生きる“アラ還世代”の心を奮わせたい」と、キャラクターのナマズに込めた思いを口にします。

一度の人生、生かさないと
「小学生の孫が短冊にビール屋さんになりたいって書いてくれてね」と嬉しそうな堀越さん

「小学生の孫が短冊にビール屋さんになりたいって書いてくれてね」と嬉しそうな塚越さん

退職後、再任用職員として水戸市の県近代美術館に勤務していた塚越さんは、新しい仕事にやりがいを感じつつも自分が生きた証しを残したいとの思いを強くします。「山本有三の小説『路傍の石』の一節、『たったひとりしかない自分を、たった一度しかない人生を、ほんとうに生かさなかったら、人間、生まれてきたかいがないじゃないか』が、本当にその通りだと思ってね」

新たに挑戦できるものを模索する中、県内の酒造会社のビール造り体験会に参加しました。そして完成したビールを、息子さんが経営する洋風居酒屋の常連客に飲んでもらったところ「うまい!」の反応。これで心に火がつき、本格的にビール造りを学ぼうと決意しました。

「結城にはビールがないし、軌道に乗れば生まれ育ったまちへの恩返しにつながると思って」。美術館に勤めながら栃木県宇都宮市内のブルワリーで週3日、3カ月間修行し、2019(令和元)年、開業にこぎ着けました。

失敗恐れず、後悔するな

トウモロコシや大麦(一部)、桃、梨など結城市産をはじめ茨城県内の素材を使ったクラフトビールは定番9種。加えて季節限定品も提供しています。1回に仕込む量は150ℓで、たるの中で3週間ほど熟成させた後、冷蔵庫で寝かせて出荷するそうです。温度、時間、衛生管理には細心の注意を払います。

「相手は生き物。同じ条件で仕込んでも微妙に味わいが違うところが難しさであり、面白さでもあるんです」。

結城麦酒の醸造所。製造には温度・時間・衛生管理が重要だと言います

筆者はゆうきスタイルI.P.Aを試飲。ほろ苦さの中にフルーティーな味わいが広がる一杯。口の中に続く余韻も楽しめます

塚越さんは「小学生の孫がビール屋さんになりたいって短冊に書いてくれてね」と笑顔を見せます。一つ一つの仕事を丁寧にこなし、後世に受け継がれる味にしたいと試行錯誤を繰り返しています。

教員時代、教え子に伝えてきた「NO PLAY NO ERROR(ノープレー・ノーエラー)」。失敗を恐れずチャレンジする、やらない後悔を絶対にするな―その言葉を原動力に、きょうも小さな醸造所で挑戦を続けています。

ずらりと並んだラインナップ。ナマズのキャラクター「ギギ丸」のラベルも愛嬌があります

ずらりと並んだラインナップ。ナマズのキャラクター「ギギ丸」のラベルも愛嬌があります

商品ラインアップ(一部)
〇ゆうきスタイルI.P.A/地元結城の大麦を一部使用。迷ったらまずこの一本
〇ゆずエール/雨引山楽法寺(茨城県桜川市)の大粒青ゆずを使用
〇ゆうきみらいALE/結城市産もろこし「味来みらい」を使った結城ブランド認定品


※いずれも330ml。価格は500~600円(税別)。下記メールからも注文可能

結城麦酒
住所:茨城県結城市中央町1-7-1
営業時間:午前7時半~午後6時半
定休日:なし
電話:090-1812-4510
E-mail:yukibeer2019@yahoo.co.jp
ホームページ:https://yukibrewery.com/

 


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