初公開された「黄金の茶道具」。まばゆい輝きを放ちます=筑西市大塚 地域別
初公開された「黄金の茶道具」。まばゆい輝きを放ちます=筑西市大塚

筑西市の「ザ・ヒロサワ・シティ」は、何度来ても新たな発見がある、進化し続けるテーマパークでした ⑤《廣澤美術館、黄金の茶道具編》



茨城県筑西市内、およそ100万平方メートルの広大な敷地に広がる「ザ・ヒロサワ・シティ」は、総合企業グループ「広沢グループ」が運営しており、廣澤美術館、テーマパーク「ユメノバ」、下館ゴルフ倶楽部、宿泊施設など多くの施設があります。5回目は「ザ・ヒロサワ・シティ」のもう一つの見どころである廣澤美術館と黄金の茶道具などを紹介します!

巨石に覆われた隈研吾建築

廣澤美術館は、2021年1月に開館しました。本館の設計は、新国立競技場などを手がけた建築家・隈研吾氏が担当しています。外観が見えないよう、全国各地から集めた巨石1500個、約6000トンで覆われています。
敷地内は開放的な日本庭園になっており、芝生、枯れ山水、竹林、樹木などで美しく整備されています。「つくは野の庭」と名付けられた庭園は、それぞれ「きよらの庭」、「ほむらの庭」、「しじまの庭」と名付けられています。命名は、元号「令和」の考案者とされる万葉集研究の第一人者、中西進氏です。
本館のほか「石の美術館」、「つくは野館」「人間国宝館」など5つの展示館が敷地内に点在し、庭園を散策しながら見学できます。
建物と巨石、庭園が見事に融合した廣澤美術館=筑西市大塚

建物と巨石、庭園が見事に融合した廣澤美術館=筑西市大塚

間近で千住博氏の作品を鑑賞

本館では、「伝統と革新 千住博と黄金の茶道具特別展」が5月12日まで開催されています。日本画家で日本芸術院会員の千住博氏の作品17点と、同美術館の目玉展示である黄金の茶道具を紹介しています。
廣澤美術館の特徴は、とにかく作品との距離が近いこと。千住氏の「滝」を題材とした「ウォーターフォール」シリーズを少し離れて眺めることで、全体の構成の巧みさに驚かされます。続いて近くに寄って細部を見ることで、計算し尽くされた色の配置や重なりに関心させられます。作品制作にかける思いを語った千住氏のDVDも上映されており、より理解を深めることができます。
千住博氏の作品が並ぶ廣澤美術館本館内部=筑西市大塚

千住博氏の作品が並ぶ廣澤美術館本館内部=筑西市大塚

黄金の茶道具は巨大なアレの中に

本館を出て、枯れ山水が美しい「浄の庭」を歩くことしばし。「黄金の茶道具」が展示されている「つくは野館」に到着です。案内表示に導かれ、館内を進みます。奥まった暗がりの中に、それはありました。
「黄金の茶道具」。2023年5月に東京都内で開催されたオークションで、同美術館が3億円で落札し、当時大きな話題となりました。同美術館を運営する広沢グループの広沢清会長は、当時の茨城新聞の取材に対し「町おこしの目玉にしようと思っている」と話していました。
今回が購入後初公開となる「黄金の茶道具」は、藤堂高紹たかあき伯爵が所蔵していたもので、藤堂家当主でも年に一度しか目にできない秘蔵品でした。第二次世界大戦中に出された「金属類回収令」を受けて供出され、日銀買い取りとなりましたが、幸運にも資源として使用されることなく生き残り、1960年に藤堂家に売り戻されました。
「黄金の茶道具」の展示室は、何と巨大な耐火金庫を茶室風に改装したもの。広沢グループの「日本アイ・エス・ケイ」が制作したそうです。
茶入、天目てんもく茶碗、天目台、杓立しゃくたて、釜、釜鐶かまかん風炉ふろ建水けんすい、火箸、箸置の10点から成り、重さは合わせて10.4キログラムにもなります。作者は不明ですが、中国の技術を取り入れた格式高い「唐物写し」で構成されています。いずれの品も豪華な黄金の輝きを放ちつつ、優雅さと気品が漂ってきます。
初公開された「黄金の茶道具」。まばゆい輝きを放ちます=筑西市大塚

初公開された「黄金の茶道具」。まばゆい輝きを放ちます=筑西市大塚

分館にも貴重な常設展示の数々

本館から道を渡ると、常設展示がある「芸術の森 分館」に着きます。「陶芸館」には、地元筑西市ゆかりの陶芸家で文化勲章を受賞した板谷波山いたやはざんをはじめとした陶芸作品、「鶴岡義雄つるおかよしお館」には、茨城県土浦市出身の洋画家で舞子シリーズなど女性を艶やかに描いた日本芸術院会員の鶴岡義雄らの作品が多数展示されています。
ほかに栃木県の益子焼や茨城県の笠間焼を集めた「ちくせい・益子・笠間館」、板谷波山の提唱で発足した茨城工芸会の作家の作品を紹介する「茨城工芸会展示館」などがあり、茨城県の文化芸術を間近で体感できます。
また、毎月第2、第4日曜日のみ開館している「寺内タケシ記念館」は、2022年にオープンしました。土浦市出身で「エレキの神様」と称されたギタリスト寺内タケシのエレキギターや写真、ステージ衣装や賞状・トロフィーなど1500点が展示されています。
他にも紹介し切れなかった施設が多数ある「ザ・ヒロサワ・シティ」。世の中にはさまざまな趣味・嗜好しこうがありますが、ここなら何か心に刺さる展示に巡り会えるはずです。何度来ても、新たな発見ができる「ザ・ヒロサワ・シティ」をぜひ訪ねてみてください。
廣澤美術館
住所:茨城県筑西市大塚599−1
電話:0296-45-6228
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)
休館日:月曜日(4月29日、5月6日は開館。5月7日は休館)
入館料:一般、1000円 高校生・大学生、700円、中学生500円、小学生以下無料
ホームページ:https://www.shimodate.jp/hirosawa-museum_of_art.html

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