古寺巡礼。ひっそり息づいていると言っていいような、茨城県桜川市の穴場的な古刹二寺に参拝してきました。
文化財の宝庫
まず訪ねたのは、桜川市富谷の富谷観音(小山寺)。茨城(栃木)県道つくば益子線から「富谷山ふれあい公園」に向けて、林道久原富谷線を車で上ります。舗装されていますが草木が伸びている所があり、注意が必要です。
富谷観音は富谷山(標高365メートル)の中腹にあり、奈良時代の735(天平7)年に聖武天皇の勅願で行基が開いたと伝えられています。
車を止め、境内を歩くと茨城県指定文化財の仁王門に至ります。そこからやや急な石段を上ると、右手から本堂、左手から三重塔が目に飛び込んできます。
本堂は五間四面の四柱造りで、江戸時代に再建されたものです。こちらも茨城県の文化財に指定されており、どっしりと存在感があります。本尊は行基作と伝えられる十一面観音。正面の格子戸越しに姿を見ることができます。さい銭を入れ、手を合わせます。
鳥が翼を広げたように優雅な三重塔は、室町時代の1465(寛正6)年に建立されました。関東以北で最古のものとされ、国の重要文化財に指定されています。
境内は文化財の宝庫です。江戸時代に建立された鐘楼は茨城県指定文化財、樹齢700年を超える大杉は桜川市の天然記念物に指定されています。境内は木陰が多く、暑さを和らげてくれます。
展望台から望む市街と山々
小山寺の西側に「富谷山ふれあい公園」が整備されています。小山寺から歩いて行けます。
筆者の父親の実家が富谷山の麓にあり、筆者は子どもの頃、公園の展望台に上って、眼下に広がる市街地や加波山、筑波山を眺めたものです。好天時には富士山を望むことができ、国土交通省関東地方整備局の「関東の富士見100景」にも選ばれています。
昔を懐かしみながららせん階段を上り、展望台の最上部に立ちます。
続いて桜川市本郷の妙法寺に向かいます。延暦年間(782~806年)の開山で、その後慈覚大師が再建したと伝えられています。筆者の父親の実家は妙法寺の檀家になっています。
筆者のブログの記事を確認したら、妙法寺にお参りするのはおよそ18年ぶり。初めて参拝したのはさらにその十数年前でした。今回は3度目ということになります。
立派な山門と鐘楼門をくぐると本堂があり、向かって左側に庫裏になっていて、回廊で本堂とつながっています。
今回は事前に電話して拝観の許可をいただきました。寺の方が常時対応できるわけではないので、拝観希望者は事前に電話で確認するようお願いします。本堂内は撮影禁止です。
本堂に上がると、本尊の地蔵菩薩(延命水引地蔵尊)が中央に安置され、その前に阿弥陀如来がお座りになっています。このためお地蔵様は「秘仏」状態になっていて全身を見ることはできません。
その右側に不動明王(金色不動尊)。妙法寺は北関東三十六不動尊霊場の第三十三番札所になっています。
衆生救済のために
そして右端に、関東地方で唯一の即身仏(ミイラ)が祭られています。
舜義上人。相模国三浦郡の出身で、69歳の時に鎌倉の宝戒寺から妙法寺に来られ、1686(貞享3)年2月15日、「衆生済度」のため78歳で入定(入滅)されました。
舜義上人は朱色っぽい法衣をまとわれ、ガラス製の厨子の中に座っておられます。背中が曲がってしまわれたのか、身丈が少し短い印象です。口を大きく開いておられます。静寂の中、線香をお供えし合掌します。
入定後、遺体は阿弥陀如来の石仏の中に87年安置されたということで、「石棺」の役割を果たしたその石仏は境内に現存しています。
今回、富谷観音と妙法寺でいただいた御朱印です。いずれも書き置きです。富谷観音では座禅や写経を指導してくれるそうなので、興味がある方は問い合わせてください。
所在地:茨城県桜川市本郷13
電話:0296-75-1802(拝観を希望する場合は必ず事前に連絡し確認してください)
拝観料:志納