城下町として、そして商都として発展した茨城県結城市は、蔵や町屋など歴史的建造物が並び、歴史的な街並みが息づいています。
特に見世蔵は明治初期から大正期にかけて建築され、今でも約30棟が現存していて、全国有数の規模を誇ります。
「TEN」は起点の「点」
このような結城の町中に2023年10月、90年前の古民家をリフォームして誕生したのが「HOTEL(TEN)」です。

HOTEL(TEN)の外観=結城市結城
「HOTEL(TEN)」は結城のまちづくりに取り組む一般社団法人「MUSUBITO」が建物を買い取りリフォームした一棟貸しの宿で、10人まで宿泊できます。
ホテル名の「(TEN)」は起点の「点」。ここを起点に結城とのご縁を結んでほしいと名付けられました。
オープンと同時に女将になったのが松田美幸さんです。美幸さんは生まれも育ちも結城。結城が大好きな20代です。

女将の松田美幸さん
建物探訪 風情ある古民家
松田さんに「HOTEL(TEN)」を案内してもらいました。
のれんのかかった玄関から中に入ります。すぐ右手に年代物のステレオが置かれた小部屋がありました。

壁で仕切られた落ち着きのある小部屋
「この建物は建設業の方の手によるもので、この部屋は打ち合わせなどに使ったようです。音楽は聴けませんが読書をしたりするにはよい部屋です」
確かに小ぢんまりしていますが落ち着いた雰囲気が漂います。ここで原稿を書いたらはかどりそうです。
小部屋の先には横長の広い部屋がありました。

テーブルにはプロジェクターも備えられ、会議などにも使えます
「10人が一緒に食事できるキッチンです。調理台が部屋の中央にあるので対面でわいわいと調理を楽しめます」
キッチンでの食事もよいですが、筆者はキッチンの前にある居間で、庭を見ながらゆっくりと飲みたくなります。古民家の風情ある設えでお酒が進みそうです。

古民家らしい障子のある居間
次に2階を案内してもらいました。
2階は2間続きの広間です。ふすまで仕切れるので男女別に使うこともできます。

2階の奥部屋には床の間や明かり窓があり、古民家の風情を伝えています
「お勧めは縁側です。手すりに飲み物を置けるように細工してあります。ここに座って眺める夕景色は素敵ですよ」

縁側の手すりにドリンクホルダーが備え付けられています
まちとひとをつなぐ
宿泊者には結城紬の羽織も用意されています。近所には「とりぷれ」で紹介した飲食店などもあります。羽織姿で町を巡ってみるのもよいものです。
「ここからからよきご縁が結ばれたらうれしい」と話す松田さん。女将になってから旧友と再会したりよき仲間が増えたりしたそうです。
HOTEL(TEN)は見えない糸を紡ぐホテル。宿泊して結城との縁を結んでみてはいかがでしょう。