茨城には30を超える酒蔵があります。その中で、お奨めの日本酒と聞かれたら、その一つに挙げたいのが結城市の酒蔵「武勇」です。
武勇は江戸時代末期に創業、約170年の歴史を誇ります。店舗をはじめ蔵は国の登録有形文化財。通りに面して造り酒屋の良好な景観が続きます。
店舗内には昔ながらの帳場があり、蔵を代表する日本酒がずらりと並べられています。
筆者がよく飲む純米酒もありました。しっかりとした辛口で、酒は1日2合までと思いつつ、ついつい手を伸ばしてしまいます。
川(水)に県境はない
社長の保坂大二郎さんに迎えられ、酒造りへの思いなどを伺いました。
保坂さんは「酒は水が命、ゆえに水系が酒を造ります。武勇は鬼怒川水系にあり、栃木県から流れている鬼怒川の水が源になっています」と説明してくれます。
私たちは茨城の酒、栃木の酒、群馬の酒という分け方で酒を見て、飲んでいますが、川に県境はなくつながっています。鬼怒川の酒、利根川の酒、久慈川の酒、那珂川の酒…と捉えれば、県境を超えた水系の酒となります。
筆者はこれまで水系というイメージを持って酒を飲んでいなかったので、目からうろこが落ちました。茨城の酒と言うよりも鬼怒川の酒と言われれば、鬼怒川の水をイメージして味わうことができます。
鬼怒川の清流を思い浮かべるだけで、さらにおいしく感じられるのではないでしょうか。
また、保坂さんは蔵人といっしょに新たな酒造りにも挑戦しています。今は茨城県産の酒米「ひたち錦」を使い、試行錯誤を繰り返しているところです。
「伝統を守っていくだけではいけません。創意工夫と革新性を持って酒造りに励み、武勇の歴史を守っていきたい」と笑顔で話してくれました。
たまらない芳香
一通り話を伺った後、酒蔵を見学させていただきました。今は仕込み中なので、蔵には入れませんが、蔵には仕込みタンクが並び、のぞいただけで芳香が漂ってきました。これだけで酒が飲みたくなります。
酒蔵見学は仕込みが終わる6月から8月まで、10人以内で予約制となります。見学は一人500円、ホームページや電話で受け付けます。
原稿を書いているうちに武勇をはじめとする鬼怒川の酒が飲みたくなりました。今宵も心地よく酔うことができそうです。
住所:茨城県結城市結城144
電話:0296-33-3343
定休日:夏季(5月~8月)日曜、その他の季節は土・日曜
ホームページ(酒蔵見学):https://buyu.jp/tour/