最近とりぷれエリアで取材をする際は、ネタ探しのために、取材ではなくても道の駅に寄ることにしています。先日、茨城県古河市大和田の「道の駅 まくらがの里こが」を訪ねたのが、今回の記事を書くきっかけになりました。
「福よ来い」の隣に・・・
「道の駅 まくらがの里こが」は、納豆売り場が充実しています。以前、猫パンチさんが紹介していた、下妻市の「道の駅しもつま」で製造している、わらつと納豆「福よ来い」も並べられていました。
以前から気になっていた「福よ来い」に手を伸ばした時、隣の棚に貼られたあるものが筆者の目に飛び込んできました。
世界一長い名前の納豆(おそらく)
縦に読むのか横に読むのか一瞬迷う、カタカナの羅列がそこにはありました。
それほど大きくもないポップに書かれていたのは、
プロデュース
タベタイカラ
ツクリマシタ
ルイボスティージコミノ
チュウツブナットウ
という全46文字の商品名です。
分かりやすくするために漢字で表記すると「四代目の嫁プロデュース 食べたいから作りました ルイボスティー仕込みの中粒納豆」となるのでしょうか。
茨城県には、大洗鹿島線に「長者ヶ浜潮騒はまなす公園駅」があります。読み仮名で全22文字の同駅は、1990(平成2)年11月の開業当時、日本一長い読み仮名の駅でしたが、現在は4位です。
駅名に詳しい方は多いでしょうから、順位は正確です。しかし納豆の商品名が集約されているデータベースは、ネットで見つけられませんでした。筆者がネットで調べた範囲では、兵庫県のスーパー「ヤマダストアー」が販売している全26文字の「タレなんていらないでしょうが タレなし納豆(10P)」。
本当に世界一長いのか確認はできませんでしたが、ポップに(おそらく)と書いているところに、奥ゆかしさを感じます。この日は残念ながら売り切れていたのですが、どうしても気になって、後日、製造元である古河市横山町の「杉本納豆店」を訪ねました。
商品名の通りだった、誕生のきっかけ
古河市横山町の有限会社「杉本」工場兼店舗に入ると、4代目の杉本浩一さんと、妻の美保子さんが笑顔で出迎えてくれました。以前は市内に3社ほどあった納豆製造業者も、今では同社だけだそうです。「創業100年はたっているけれど、正確な創業年は分かっていません」と浩一さんは笑います。
さっそく「ヨンダイメノヨメ(以下略)」(商品名が長すぎるので、以下このように表記します)の特徴や商品開発について説明していただきます。元は、美保子さんがルイボスティーが大好きで、パートに行く際に必ず水筒に入れて持っていたのがきっかけだったそうです。
納豆を作る工程の一つに、浸水という、大豆を水に浸す作業があります。ここに水ではなく、大好きな「ルイボスティーを使ったら?」というひらめきが、商品開発の端緒になりました。大豆を小粒ではなく中粒にしたのは、より多くルイボスティーを吸うだろうという目算から。まさに商品名そのままです。
開発時に苦労した事は特になかったそうで、浸水の時間やその後の工程である、大豆の蒸し時間、発酵時間なども、通常の納豆と変わらないそうです。
古河市唯一の納豆店が孤軍奮闘
元々この納豆は、コロナ禍で売り上げが減少する中、新型コロナウイルスの影響を受けるまちを楽しい食で元気づけたいと、2021年7月10日の納豆の日から、毎月1回、期間限定で新商品を発売したものの1つ。最初は豆腐づくりに欠かせないにがりを入れた「にがり納豆」でした。「ヨンダイメノヨメ(以下略)」は9月限定商品でした。
1年間、12種類の商品を販売し、浩一さんには「やり切った」という思いが強く残った一方、「商品を考え、パッケージを作り、チラシを作り、とにかく最後の頃は疲れました」と当時を振り返ります。
さまざまな商品を開発してきた浩一さんも、商品化を諦めた失敗作があるそうで、「最近だと、虎豆の納豆はだめでしたね」と苦笑いし、美保子さんも「確かにあればおいしくなかったね…」と否定しません。虎豆には褐色や黄土色の斑紋があり、それがまるで虎の模様に見えることから、この名で呼ばれます。
干支にちなんだ納豆を毎年発売しており、「寅年」だからと作ってはみたものの、小豆のようなグスグスした食感になってしまい、商品化は残念ながら断念しました。「大豆」系ではなく「いんげん」系の豆のため、色々勝手が違ったようです。「来年は巳(ヘビ)年だから、さらに難しいねぇ」と、浩一さんは悩んでいました。
環境変わっても、昔ながらの納豆にこだわる
同社では、「ヨンダイメノヨメ(以下略)」以外にも納豆を製造しています。昨今の物価高は業界にも大きな影を落としているそうです。大豆の価格はもちろんですが、浩一さんによると、「納豆を入れるパックやフィルム、納豆を包むわらの価格も値上がりしています。特にわらが手に入りにくくなっている」とのこと。
それでも「昔ながらの藁で包む納豆は、お客さまにも喜ばれる商品なので、何とか手に入れて提供を続けたい」と意気込みを語っていました。
実食リポ わずかにルイボスティーの風味 中粒なので食べ応え抜群
取材後、ご厚意で頂いた「ヨンダイメノヨメ(以下略)」を食べてみました。パッケージを剥がすと、見慣れたたれとからしが並び、フィルムの下に納豆が見えます。
食通として有名な芸術家の北大路魯山人は、納豆をかきまぜる回数にもこだわったそうで、たれを入れる最良の回数は「305回」、完成は「424回」と言ったそうです。さすがにそこまでかき混ぜる気力はないのですが、せめて十分にかき混ぜてから、たれとからしを入れてさらに混ぜます。
まずは納豆のみいただいてみます。色は間違いなく普通の納豆より茶色が濃い気がします。
口に入れると、普段食べ慣れている小粒の納豆より、中粒の納豆のせいか大豆の風味も歯ごたえも強くなっています。筆者もルイボスティーは好きでよく飲むのですが、ルイボスティーの香りはわずかにする程度でした。粘りや糸の引きは、普通の納豆と大差ありません。
次は、炊きたてのご飯の上に納豆オン! ご飯と一緒に食べると、米粒と納豆の粒の大きさの違いが少し気になります。「ヨンダイメノヨメ(以下略)」は大豆が中粒なので、慣れるまで少し時間が必要でしたが、あっという間に食べ終えてしまいました。
酒のつまみとして単品で食べたり、イカの刺身などと合わせてみたりするといいかも、と思いついたのは、3パック頂いた「ヨンダイメノヨメ(以下略)」を全て食べ終えた後でした。
また買いに行きます!
住所:茨城県古河市横山町1丁目8−3
電話:0280-22-6382
営業時間:午前9時~午後6時
定休日:水曜日
ホームページ:https://sugimoto710.stores.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/sugimotonattoten/