「マイブーム」の波に溺れましょう。みうらじゅん氏の着ている「SINCE Tシャツ」は1階の喫茶室で購入可能です ひと
「マイブーム」の波に溺れましょう。みうらじゅん氏の着ている「SINCE Tシャツ」は1階の喫茶室で購入可能です

押し寄せる「マイブーム」の波! しもだて美術館の「みうらじゅんFES マイブームの全貌展」はニヤニヤが止まらない展覧会でした



漫画家、イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、評論家など多彩な顔を持ち、幅広い分野で活躍するみうらじゅん氏の「マイブーム」を集めた企画展「筑西市誕生20周年記念 みうらじゅんFES マイブームの全貌展」が茨城県筑西市丙のしもだて美術館で、開催されています(筑西市、筑西市教育委員会主催、6月30日まで)。約1万点の「マイブーム」を集めた展示を見学させていただきました。

年譜を読むだけで小一時間

まず入り口の左側には、子ども向けアニメ「おさるのジョージ」に登場する「黄色いおじさん」に扮したみうら氏の像がお出迎えです。中に進むと、展覧会には必ず展示されている年譜が登場します。問題はその分量。細かな文字で「みうらじゅんのあゆみ」が7枚のパネルになっています。

年ごとにみうら氏のマイブームとその内容、その年にあった社会の出来事がまとめられています。パネルに書かれた「マイブーム」は年をまたいでいるものを含め、実に48種類。最後まで読んでいたら、おそらく小一時間はかかってしまうでしょう。ちなみに最初のブームは、1965(昭和40)年、7歳の時の「第一期怪獣ブーム」だそうです。

入り口で出迎える黄色いおじさんの像=筑西市丙のしもだて美術館
入り口で出迎える黄色いおじさんの像=筑西市丙のしもだて美術館

このラインアップはズルい!

小学4年生になると、怪獣からシフトして仏像ブームに。京都出身のみうら氏は、休日になると近畿地方の寺院を訪れ、拝観券やパンフレット、仏像写真、感想をまとめたスクラップ帳を作り始めます。もちろん現物が展示されていました。「これを小学生が作ったの?」と驚かされるクオリティーでした。

続いて、仕切られている部屋に入ります。そこには懐かしくも笑ってしまうレコードジャケットが並んでいました。「この人レコード出していたんだ」という著名人のもの、「こんな曲出していいの?」と頭を抱えたくなる曲などが、「大暴れ」「ジージャン」「思い出し笑い」などのジャンルごとに並んでいます。

このジャンル分けとラインアップが秀逸で、思わず「ズルい!」と言わずにはいられません。例えば「大暴れ」には、プロレスラーや格闘家の曲が並ぶ中、意外な人がジャケット写真の中で大暴れしており、笑いをこらえるのに必死でした。

その奥には「無意識スクラップブーム」と題した部屋。コロナ禍で家に籠もっていた時、溜めていた雑誌の切り抜き写真などを無意識に貼ったものだそうです。無意識に制作したとはいえ、何かテーマがあるように思えて、一枚ずつじっくり見てしまいます。

無意識スクラップブームのコーナー=筑西市丙のしもだて美術館
無意識スクラップブームのコーナー=筑西市丙のしもだて美術館

1枚の情報量に圧倒されるコロナ画

コロナ禍を機に描き始めたという「コロナ画」は、これまでに138作品が描かれました。F10号(縦約50センチ、横40センチ)のキャンバスに、みうら氏が「死の間際に見る走馬灯」を描いた連作で、締め切りはコロナ終息時。そのため作品は増え続けています。仏像の周囲に「なぜこれを描いたの?」という、さまざまなキャラクターが描かれています。1枚で見ても楽しいですが、順に並べると1つの作品になるよう構成されており、最終的には超大作になるそうです。

ずらりとならんだコロナ画。それぞれの作品の情報量に圧倒されます=筑西市丙のしもだて美術館
ずらりとならんだコロナ画。それぞれの作品の情報量に圧倒されます=筑西市丙のしもだて美術館

ご当地ソングや、ゆるキャラのビデオだけで時間が溶ける

コロナ画の次に待ち構えるのは、「勝手にご当地ソング」の動画が流れるコーナー。みうら氏と安齋肇氏が「勝手に観光協会」として1997年結成たユニットが、誰に頼まれることもなく各地を視察し、観光ポスター、ご当地ソングを作詞・作曲・旅館録音(リョカ録)し続けている活動を紹介。全都道府県48曲(北海道のみ2曲)のPVが視聴できます。

1曲2分半としても、48曲を全て視聴すると1時間半を超えます。筆者が訪れた時は、西日本各県の曲が流れていました。茨城県まで聞こうとするとかなり時間が必要だったので断念しましたが、ユーチューブで視聴できます。

 

みうら氏が名付け親でもある「ゆるキャラ」コーナーには、ゆるキャラのぬいぐるみがたくさん展示されていました。もちろん筑西市のゆるキャラ「ちっくん」もちゃんといましたよ! 全国のゆるキャラを音頭にした「ゆるキャラ音頭」の動画も流れていました。

ちっくんを探せ!=筑西市丙のしもだて美術館
ちっくんを探せ!=筑西市丙のしもだて美術館

ほかにも、仏教の般若心経に記された漢字の屋外看板などを探して撮影し、順番に並べた「アウトドア般若心経」ブーム、冷蔵庫に貼る水道工事などの宣伝用のマグネットシートを集めた「冷マ」ブーム、旅行用パンフレットのカニの写真を集めた「カニパン」ブームなど、全てを紹介できない「マイブーム」が会場に詰め込まれていました。

会場を出ても油断はできません

通常、筑西市ゆかりの芸術家作品が展示されている同館のⅠ室では、2020年7月に同館で開かれた「安齋肇 えとえほん展」の際に制作された「しもだてにきた。」が特別展示されています。同市ゆかりの芸術家の作品の中に、安斎氏の作品が違和感なく展示されているギャップがたまりません。

さらに会場を出ると、左側にスタンプ台の置かれたテーブルがあります。ここには先程「ゆるキャラ音頭」で登場したゆるキャラのゴム印が置かれています。専用の用紙が用意されており、好みのゆるキャラのスタンプを押すことができます。

また、しもだて美術館の入る「しもだて地域交流センター アルテリオ」1階の喫茶室では、「SINCE Tシャツ」や冷マなどのオリジナルグッスも販売されています。会場外でも油断せず最後まで楽しみましょう!

スタンプの数々。どの県のものか分かるようになっています=筑西市丙のしもだて美術館
スタンプの数々。どの県のものか分かるようになっています=筑西市丙のしもだて美術館

とにかく膨大な「マイブーム」の展示品に圧倒される同展ですが、それぞれのブームの対象は、誰もが一度は見たことがある物ばかりです。そこに「面白さ」を感じられるのが、みうら氏の凄さであり、連綿と続く「マイブーム」のエネルギーなのでは、と感じました。何度でも行きたくなる同展に、ぜひおでかけください!

しもだて美術館
住所:茨城県筑西市丙372
電話:0296-23-1601
開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時半まで)
休館日:月曜日(5月6日は開館、翌日が休館)
入館料:一般800円、団体(10名様以上)750円、高校生以下無料
ホームページ:https://www.city.chikusei.lg.jp/page/page011273.html

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