ファミリーや初心者も気軽に登れる、日本百名山で最も標高の低い筑波山(887メートル)を中心とした筑波連山。その一つ「きのこ山」に登り、県道石岡筑西線の上曽峠に下りた筆者と「とりぷれ」ライター仲間の小波来さんの2人は、今回の山歩きの目的である通称「幽霊林道」に入ります。
標高309メートルの上曽峠から同250メートルの湯袋峠付近まで、林道(北筑波稜線林道)は約3.2キロあります。
ごみが不法投棄されたり、事件・事故が起こったりするなどして、噂が噂を呼んで「幽霊」の通称がついてしまった林道。道は荒れ、上曽、湯袋どちらの入り口も一時期、車止めが設置されて、車両は通行できなかったということです。現在は通行可能です。
通行注意の場所も
この日(5月25日土曜日)は晴天で昼前とはいえ、枝打ちされていない木々が頭上にうっそうと生い茂っていて薄暗く、林道も舗装はされているものの、枯れ葉や枝が落ちていて、お世辞にも歩きやすいとは言えません。道幅が狭く車がすれ違うことができない箇所もあり、注意が必要です。
以前車で来たことのある小波来さんの話では、これでもかなりきれいになったそうです。ただし、カーブする所に設置されたミラーは、割れ落ちているものが複数ありました。
アップダウンを繰り返しつつ、湯袋峠方面に向かって少しずつ下っていきます。筑波連山を縦走するコース、関東ふれあいの道の一部であり、さらに週末ということもあって、登山客やサイクリストもちらほらいてホッとします。
そして2キロ以上進んだでしょうか、水の音が聞こえてきて、林道に沿うように沢(川)が現れました。
すると二の腕の後ろあたりがぞくぞくして、鳥肌が立ってきました。水辺に来て気温が下がったからということだけではなさそうです。小波来さんは言葉を発せずに少し前を足早に歩いています。話しかけても聞こえていないのか返事がありません。下山後に聞いた話では、この辺りで小波来さんが不可解な体験をしていました(詳しくは終盤で…)。
沢と石仏
「幽霊林道」に入って約40分が経過しました。道もいよいよ終わりが近くなり、右手に石仏が見えてきました。お地蔵様でしょうか、赤いずきんをかぶり前掛けをしていて、花や飲み物が供えられています。どれも比較的最近のものとみられ、定期的に来ている人がいることを物語っています。
石仏は沢の方を向いているようでした。慰霊のためのものなのでしょうか。
午前11時44分、県道月岡真壁線の湯袋峠近くに到着しました。ここから桜川市真壁町の市街まで下ります。距離は4キロちょっと。交通量はそれなりにあるため、歩く時は注意が必要です。
車に注意しながら歩いていると、沢が滝のように流れ落ちている所が左側にありました。「まさかり淵」です。昔、山で木を切る仕事に携わった人たちがまさかりを洗ったことに由来しているようです。
さらに下ると、水くみ場があり、女性2人が大量のペットボトルに湧き水をくんで車に積んでいます。聞くと、栃木県内から来たそうで、煮沸して飲用・料理用などに使っているそうです。
車を止める際は通行する車両の妨げにならないよう配慮する必要があります。
順調に歩いて、午後1時前に市営高上町駐車場に到着しました。スタートから約4時間、13キロちょっとの山歩き街歩きでした。
男性の声? そしてカメラの不調
下山後に小波来さんが打ち明けてくれました。2人で「幽霊林道」を歩いている時に、沢の音に交じって男性の「もう」という声を耳元で聞いたそうです。空耳でなかったとしたら、「もう行ってしまうのか」あるいは「もう帰れ」の「もう」なのか。明らかに筆者の声ではなく、中年ぐらいの男性の声だったといいます。
さらに、上曽峠の林道入り口と石仏、そして林道出口で小波来さんが撮影したはずの写真3枚が、全く撮れていませんでした。筆者は撮影できましたが、撮ろうとするとオフになってしまったり、なかなか起動しなかったりするなど、林道の後半から湯袋峠を下りるまで、カメラの不調に悩まされていました。いずれも原因は分かりません。
そしてもう一つ、詳しくは書けないのですが、林道で見かけた車の関係でちょっと怖いことがありました。
1年後の縦走を目標に
気を取り直して、下山後は桜川市内、筑波山麓のそば屋さんへ車で行き、遅めの昼食です。香り豊かな田舎風そばをいただきながら、来年の今ごろに筑波連山を御嶽山から筑波山まで縦走しようと、小波来さんと目標を立てました。縦走ルートにはもちろん今回の「幽霊林道」もしっかり含まれています。
※筑波連山登山の過去記事